ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の開幕まで、20日であと半年になる。日刊スポーツでは3日間連続で特集を掲載する。1回目は、欧州6カ国対抗を現地で視察した前サントリー監督の沢木敬介氏(43)が、最新ラグビーのトレンドを分析。日本が何を準備し、1次リーグで同組のアイルランド、スコットランドとどう戦うかを聞いた。【取材・構成=荻島弘一】

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17日に終わったばかりの15試合のデータをもとに、沢木氏はW杯の「前哨戦」を振り返った。北半球の王者を決める大会は、半年後のW杯を占うもの。アイルランドの連覇を阻み、ウェールズが全勝優勝した裏には、新しい世界のラグビーの流れがあった。

沢木 感じたのは、ラグビーが変わってきているなということ。ウェールズは5試合で10トライ。1試合2トライでも優勝できたのは、ディフェンスの力。全試合を通じて、最新のラグビーはディフェンシブな方向にある。今回、ウェールズのタックル成功率は89・8%と驚異的。他の5チームも85%を超えていた。どのチームも、ディフェンスへの意識は高かった。

85%はトップチームが試合前に目標として掲げる数字。それを、すべてのチームがクリアしていた。それほどディフェンスの意識が高く、規律をもってやっていたのだ。「ディフェンス力がある」のは、世界で戦う上での大前提になる。

沢木 イングランドは個々の選手の能力も高く、5試合で24トライを奪った。それでも、失トライ13で優勝はできなかった。ウェールズの10トライは最下位のイタリアと並ぶが、それでも優勝できたのは失トライが7だったから。いかにトライを奪われないかは、W杯でも重要になる。

守備力強化とともに、沢木氏は15試合の特徴として「フィールドポジションの重要性」を挙げた。どこでボールを持ち、試合を進めるか。そのために、どうボールを運ぶか。結果を分けるカギはそこにある。

沢木 ウェールズとアイルランドは、ともにペナルティーが11ずつだった。ウェールズはPG6本を決めたが、アイルランドは0。どこでペナルティーをとるか、つまりどこでゲームをするか。ウェールズは徹底して相手陣で試合を運んだ。相手のペナルティーですぐにPGが狙える位置だ。自分たちが思う位置にボールを運ぶ力。その必要性を、今大会では顕著に感じた。

6カ国対抗から割り出された「今の世界ラグビーのトレンド」。これを受けて、日本がW杯と戦うためには、どう準備すればいいのか。沢木氏は少し考えてから3つの柱をあげた。

沢木 まずはディフェンスの強化。これには、個々のタックルなどディフェンス力を上げ、タックル成功率を高める必要がある。次は規律。チームとして規律を守り、プレーすることができるか。最後にゲームを読むこと。キックを使ってエリアをとってくる相手にどう対抗し、逆にいかに相手陣で試合を進めるか。ディフェンス力を上げるだけでなく、有利なフィールドポジションからいかに得点するか。そこが、勝つためには必要になる。

(ニッカンスポーツ・コム/ラグビーコラム「サントリー前監督 沢木敬介の解説」)

16日、欧州6カ国対抗を制し歓喜するウェールズの選手たち(AP) 
16日、欧州6カ国対抗を制し歓喜するウェールズの選手たち(AP)