例年よりハイペースという桜前線は、まだ北海道には上陸していない。開花が待ち遠しいが、北海道内では真夏の東京オリンピック(五輪)・パラリンピックで満開の桜で「おもてなし」をしようと取り組んでいる人たちがいる。「北海道雪氷桜プロジェクト2021」だ。札幌市内ではサッカーとマラソン・競歩が開催される。北海道内から集めた桜の枝を雪山で休眠させ、開花を遅らせる。その桜で会場を彩り、選手を応援しようという企画だ。7月中旬から下旬に雪山から掘り起こし、期間中に満開を迎える予定だ。

3月20日、札幌市内の北海道神宮で木の剪定(せんてい)によって不要となったソメイヨシノの枝を集め、まとめる作業を見学した。同プロジェクト実行委員会の越智文雄委員長(63)は「五輪が無事開催されることを祈って。その頃にはコロナも収束していて欲しい。『希望の桜』です」と願いを込めていた。

今年で3度目となる。2年前に試験され、昨年本番に向けて実行される予定だった。だが20年3月24日、東京五輪・パラリンピックの1年延期が決定。すでに北海道内から3000本以上の桜の枝が集まっていたため計画を続行し、昨夏開花させた桜は新千歳空港ほかで展示された。

五輪開催には否定的な声が多い。そう思い込んでいた。だが、こうやって待ち望み、準備を進めている人たちもいることを忘れてはいけない。参加した幼稚園児や小学生は楽しそうに枝を整えていた。その保護者の言葉が残った。「とても間接的にだけど五輪に携われればと思って参加した」。とても前向きだった。

ただ、同プロジェクトにも本番の開催パターンによって、あらゆる想定がされている。マラソン・競歩の沿道応援が実現すれば、観客に配布して、桜ロードを選手が走行するプランが理想だが、無観客の場合は選手や宿舎への贈呈、市内での展示を予定。もしも開催されなかった場合は、医療従事者へ贈呈するつもりだという。

今は雪山で眠っている桜が満を持して「おもてなし」の時を迎え、選手、画面を通じて応援する世界中の人たちの目に映り、喜ばれることを祈る。【保坂果那】