スノーボードバンクドスラローム男子下肢障害で成田緑夢(24=近畿医療専門学校)が金メダルを獲得した。銅メダルのスノーボードクロスに続く今大会2個目で、この種目の初代王者に輝いた。目標の「挑戦」を貫き、3本の滑走で全て自己ベストを更新し、自身を褒めたたえた。男子大腿(だいたい)障害の小栗大地(37)は6位、山本篤(35)は記録なしに終わった。

 冷え込んで小雪が舞う中、成田は初の大舞台で「3本とも挑戦する」と心に決めた。14のバンク(斜面)がある約150メートルのコースは氷のように固まっていた。転倒者が相次ぎ、的確なライン取りと強い体幹を生かした低姿勢の滑走で攻め続けた。3本全てでベストタイムを更新し、圧巻の滑りを披露した。「最高の気分です。完璧。アスリート成田緑夢に『良くやった』と言ってやりたい」と、誇らしげに胸を張った。

 大勝負だった。2本目は想像以上のコースの固さから「軽自動車」をイメージして小回りが利くよう両脚を約3センチ後ろにした。3本目は転倒の恐れがある中、第5バンクで「アメ車」のようにエンジン全開で縦に突っ込んで2本目よりも1秒以上縮める48秒68をマーク。「メダルは取れなくても良い。守るよりも挑戦してドキドキワクワクしたかった」。ヒールターン克服のため左足にアルペン用の硬いブーツを履くなど試行錯誤を重ね、常に失敗を恐れずコース状況に応じた最善を尽くした。

 夢は金メダルではなく「パラリンピックに出場して多くの人に希望や感動を与えること」だ。挑戦し続けなければかなえられず「たまたま、今回は結果として金メダルだった」と表現する。この感性は“兄貴”として慕う同種目に出場した「パラ陸上界の鉄人」山本とも似ている。共通点は「夏冬二刀流」で、競技をする上で「ドキドキワクワク」を追求する。

 メダル授与式では君が代が流れる中、一番上に日の丸が掲げられるのをしみじみと見つめた。「けがをした時はスポーツに復帰出来るとは思っていなかった。今、その状況に立っている人のちょっとした光になれるんじゃないかな」。障害を負ったことで記録よりも「記憶」を大切にする24歳が「理想のアスリート像」を初の大舞台で体現した。【平昌(韓国)=峯岸佑樹】