読者が気になる話題に迫る「平昌 eye's」。第2回はジャンプ女子初の銅メダルを獲得した高梨沙羅(21=クラレ)に迫る。12日のノーマルヒルで1、2回ともに103・5メートルを飛び銅メダルを獲得し、ソチ五輪4位の雪辱を果たした。ジャンプを研究する北翔大の山本敬三教授が、勝因の1つである左右対称性が保たれたフォームを分析した。

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 高梨の新たな夢が早くも動きだした。銅メダル獲得から一夜明けた13日、平昌市内で行われた会見で「(22年の)北京五輪では金メダルを取りたい」と言い切った。試合後は、午前3時にホテルに戻り、そこから軽食を済ませた後、テレビ局をはしご。それでも、4位だったソチの呪縛から解き放たれた表情はすがすがしい。「今はホッとした気持ちと悔しい気持ちが自分の中で半々。でも、何より楽しんで飛べたのが一番」とほほ笑んだ。

 弱点を克服した先にメダルがあった。ジャンプを研究する北翔大の山本敬三教授は、高梨の良さの1つに「空中できれいに左右対称で飛んでくる」ことを挙げる。「左右の足でしっかりカンテ(飛び出し口)を押せているから真っすぐ飛び、空気抵抗が少なく飛距離を伸ばせる」。

 ジャンプは「跳躍が目的ではなく飛行が目的」だが、選手は跳躍が目的になり飛ぼう飛ぼうとすると力みにつながる。勝ち続けた以前は、この左右対称性が保たれていたが、昨季の後半から力みが出たり、助走路でうまく自分の重心に乗れていないと空中姿勢が乱れた。昨季、世界選手権で3位の時も、助走路で何らかの問題が生じ、空中で右のスキーが開いてしまっていた。

 バランスを崩すと、高梨は空中で右手で修正しようとするため、左右対称性が失われる。飛行姿勢が早く作れないことで、空気抵抗を受け失速する。「左足一本で飛ぶような形になっていた」と分析する。

 今季の前半戦もそれが出ていたが、今年の1月14日のW杯札幌大会の2回目では、きれいな左右対称で飛んでいった。この時、コーチボックスからは「おぉーと声が上がった」という。山本教授は「2本のスキー板でしっかり飛んでいた。ここが修正できれば問題ないと思っている」。

 今季、W杯10戦で未勝利だったが、先月のW杯蔵王大会では、助走路で重心の落とし方にヒントを得て改善。ジャンプの完成度を上げ、真っすぐ飛んで前回五輪のリベンジを果たした。【松末守司】