口元は必死に白い歯を見せながら、ゴーグル奥の大きな瞳は潤んでいた。フリースタイルスキー女子モーグルの村田愛里咲(27)は決勝1回目で70・77点の18位。上位12人による決勝2回目へ進めなかった。第1エアで高難度の「フルツイスト」(伸身後方1回宙返り1回ひねり)を決めた後のターンが乱れた。結果は「悔しい」。それでも「楽しかった」と笑った。4年前、立てなかった舞台にいたから。

 予選5位通過したソチオリンピック(五輪)決勝直前の公式練習。「バーン」と強烈な痛みが走り、倒れ込んだ。左膝前十字靱帯(じんたい)を損傷。熱気が高まる会場を救急車で去るしかなかった。

 手術して2週間後、自宅に戻った。部屋で1人、泣きながら吐いた。「五輪だよね? 何で、何で…」。全治9カ月。ネガティブな感情が心を覆う。その度、「新しい自分になろう」と言い聞かせた。何度も心は折れたが、苦しいリハビリに耐え、15年8月には膝に入っていた金具の除去手術も終えた。W杯(ワールドカップ)に戻ってきたのは16年12月。今年1月のW杯で8位となり、唯一の代表入りを果たした。

 8日の練習では、悩まされていた腰痛が再発。3度目の大舞台も満身創痍(そうい)だったが「成績は出せなかったけど、やりきりました」。その言葉に実感がこもった。【上田悠太】