1度は諦めた母子の夢だった。51・00点の17位で予選敗退となったスノーボード女子ハーフパイプの大江は「結果で恩返ししたかった」。

 ソチ五輪を逃し、母幸恵さん(44)に言った。「スノーボードをやめる」。その翌日、母から涙ながらに告げられた。「お金は何とかする。ふがいない感じでやめたら、何のために人生かけて、小さい頃からやってきたのか。もう4年頑張ろうよ」。厳しくも支えてくれた姿が脳裏に浮かび、現役続行を決意した。

 生まれてすぐ両親が離婚。母はいくつもパートを掛け持ちし、朝から晩まで働いた。小学1年時に五輪を目指し、スノーボードを始めるとスパルタ生活もスタートした。家では腹筋や縄跳びなどのノルマを課され、平日は体操教室、休日はスキー場へ。「人生をかけてやると決めたのだから365日一緒」と誕生日もクリスマスも祝い事はなく、むしろ説教の日。「この1年はどう変わったの?」。でも結果を出せば喜ぶ母が好きだった。

 成人した16年、感謝の思いをつづったアルバムを贈った。いつもの大会は呼ばない母を、平昌に誘った。結果は予選敗退。でも昔ならば怒られたはずの母の目に涙があった。【上田悠太】