平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)開幕翌日の午後、韓国の仁川空港に到着した。世界各国から来たであろう人々が集まり、入国審査の際は大混雑していたが、窓口の手際が非常に良く、着陸から30分そこそこで預けた手荷物をピックアップし、到着口を出た。1988年(昭63)のソウル五輪以来、30年ぶりの五輪開催にこぎ着けた韓国の気合は、空港職員の手際の良さからも感じられた。

 フィギュアスケートなど氷の競技が行われる江陵(カンヌン)に移動し、取材活動を進める。五輪開催に当たり、仁川空港や首都のソウルと、競技が行われる平昌、江陵を結ぶ高速鉄道KTX京江線が、17年12月21日に開通した。江陵には2時間程度で行けるようになり、アクセスは格段に良くなったので移動にはKTXを使う。

 思ったより、早く仁川空港の到着口を出られたので、1便、早いKTXに乗ろうと券売所に向かったが…早速、やられた。江陵など、競技会場に向かうチケットだけ販売する、特設窓口に長蛇の列が出来ていた。その隣には、クレジットカード専用の券売機が2台あり、誰も使っていないのでトライしてみた。出発、到着の駅、乗車時間帯、切符の枚数など指示通りに入力し、カードを入れて決済…と思ったら、機械が固まってしまった。呼び出しボタンを押すよう、画面に出たので繰り返し、押してみたものの、職員が来る気配は全くない。

 仕方ないので、長蛇の列に並び、特設窓口で切符を買った。窓口には、KTXを運行するKORAIL(韓国鉄道公社)の、英語が出来る女性職員が1人しかいない。「機械がダウンしたんですけど」と声をかけると、眉間にしわを寄せた。おそらく、僕の前にも相当数の旅行者から苦情があったのだろう。

 その後も見ている限り、欧米から来た旅行者と見られる20人前後が、クレジットカード専用の券売機にトライしていたが、誰も購入できていない。中には3、4度と挑むが“返り討ち”に遭った人も…。40代前後の白人男性に「機械、ダウンしてますね。僕もダメでしたよ…」と声をかけると「その通り。ダメな機械だ」と苦笑いして立ち去った。

 僕の目の前では、切符を求める列が、長くなる一方だ。特設窓口の女性職員の表情も、列の長さに比例し、険しさがさらに増している。一方、クレジットカード専用の券売機の前には、人っ子1人いない…と思ったら、また2人の“挑戦者”が…そのうち、1人の男性が購入に成功した。話を聞くと、男性は韓国出身で「普通に買えました。海外のクレジットカードに対応する登録がされていないのか…まだ開幕したばかりですから、機械ですしうまくいかないことはありますよ」と笑みを浮かべた。

 平昌五輪開催期間中に、クレジットカード専用券売機で外国人客が切符を買えるようになるのか…到着早々“洗礼”を浴びただけに、気になるところだ。【村上幸将】

 ◆村上幸将(むらかみ・こうすけ)北海道出身。日刊スポーツ入社後、整理部、静岡支局、スポーツ部、文化社会部を経て、現在はメディア戦略本部デジタル編集部記者。国内外のサッカー、カンヌ、ベネチア、ベルリンの世界3大映画祭、アカデミー賞など国内外の映画、プロレスから社会ネタまで、幅広い現場で取材。日刊スポーツが3月9日に発売する「プリキュア新聞2018春号」や「ONE PIECE新聞」の取材、制作を担当。

仁川空港第1ターミナルのKTX改札口脇に設置された、クレジットカード専用券売機(撮影・村上幸将)
仁川空港第1ターミナルのKTX改札口脇に設置された、クレジットカード専用券売機(撮影・村上幸将)