<直撃!冬季五輪 その7>

 韓国の朝鮮放送(テレビ朝鮮)が15日夜、北朝鮮の三池淵(サムジヨン)管弦楽団が11日にソウル市内で行った公演を、韓国国内で初めて放送した。

 番組のタイトルは「三池淵管弦楽団公演中継」で、午後6時20分から1時間、放送された。公演から4日遅れての録画放送だが、司会や解説者などは登場せず、三池淵管弦楽団の歌手の歌唱、演奏や「牡丹峰(モランボン)楽団」の団長としても知られるヒョン・ソンウォル氏のスピーチ、少女時代のソヒョン(26)が出演したところなど、ライブの見せ場をまとめて流していた。日本でも人気アーティストのライブ番組はあるが、よりシンプルにした感じだ。

 楽団は、歌手7人がステージの前面に出て歌い、そのバックに演奏メンバーがいるというスタイルで、歌手では20代とみられる長身の女性と30代後半とみられる女性の2人がメインのようで、ほぼ全編にわたって登場。2人とも声量があり、特に若い方の女性は美しかった。一方、演奏メンバーの衣装はピンク色のシンプルなもので統一されている。3列に並んで編成されていたが、1列目には美しくグラマーな女性を多く配置しているのが目についた。

 歌手の衣装は、体のラインが見えるセクシーできらびやかなものだった。ただ、デザインがやや前時代的だった。4曲目の「走りましょう」の時は5人の女性歌手が、上はサテン地と思われるキラキラ輝く布で作られたタンクトップ、下は黒の革のショートパンツといういでたちで、太ももをあらわにしたダンスパフォーマンスをした。ただ、踊り方を含め、パフォーマンスも前時代的だった。記憶を掘り起こすと、1970年代から80年代に放送された、日本の音楽番組の1シーンと重なって見えた。

 公演に集まった観客の大部分が、朝鮮戦争時代を知っているであろう老人だった。その観客を前に、ヒョン・ソンウォル氏が熱く語ったスピーチも印象的だった。

 「みんな、統一を祈っています。朝まで、統一の歌が流れて欲しい。今年の冬は、そんなに寒くありません。それは統一の熱気と夢があるからです。今日は風邪気味で、私の声も小さめですが、統一の願いを大きくしたく1曲、歌うことにしました。大きな拍手をお願いします。平昌まで届く、大きな拍手をお願いします」

 そして、「あぁ統一」を歌うヒョン・ソンウォル氏の姿と、客席で涙する女性の表情をアップで映した。

 番組の最後は、ソヒョンと楽団のメイン歌手と思われる美しい若い女性が手をつないで歌い、抱き合う様子を映した。金永南最高人民会議常任委員長が涙し、その姿を金正恩委員長の実妹・金与正党宣伝先導部第一副部長と文在寅大統領が笑顔で見守るシーンも映すなど、南北統一を強く意識させる内容に思えた。

 「三池淵管弦楽団公演中継」の放送直後には、政治討論番組「強い敵たち」が放送された。元アナウンサーの女性政治家、弁護士、評論家に脱北者を加えた4人が、金与正氏が金一族として初めて訪韓した意味などについて、熱いトークを展開した。

 韓国はちょうど旧正月の最中で、一家が集まり夕食を食べるであろう時間に、三池淵管弦楽団の公演を放送したところに、韓国国内での関心の高さが伺えた。【村上幸将】

三池淵管弦楽団ソウル公演で歌う楽団の女性(テレビ朝鮮より)
三池淵管弦楽団ソウル公演で歌う楽団の女性(テレビ朝鮮より)
三池淵管弦楽団ソウル公演でスピーチするヒョン・ソンウォル氏(テレビ朝鮮より)
三池淵管弦楽団ソウル公演でスピーチするヒョン・ソンウォル氏(テレビ朝鮮より)