初出場の坂本花織(17=シスメックス)が大舞台で輝きを放った。ミスない演技でまとめて、自己最高点を1・84点更新する73・18点をマークし、5位発進を決めた。

 「いつも笑顔で出た時は成績がいいので、中野先生から『できるよね?』って聞かれて『できます!』って言って、『ちょっと表情硬いよ』と言われて、それで笑顔になりました」。

 緊張を解いてベートーベン作曲の「月光」に体を委ね、スピン、ステップシークエンスと流れるように滑り進めた。基礎点が1・1倍になる演技後半に集めた3つのジャンプも勢いある踏み切り、伸びやかな着氷と持ち味を出し切った。

「いままでですごい一番良かったかなと思います」。フィニッシュすると、トレードマークの笑顔もとびっきりに、両手を握りしめた。

 1年前には想像もできなかった場所に立った。ジュニアだった昨季、シニアへの昇格ラインとのはざまにいた。本田真凜、白岩優奈と出場した17年3月の世界ジュニア選手権(台北)。中野園子コーチからは「表彰台に乗らないと、シニアに上がれないよ」とハッパを掛けられた。今大会に「ロシアからの五輪選手(OAR)」で出場しているザギトワ、本田が200点超えを果たす中で迎えた最終滑走だった。

 得意のジャンプは全て成功。「1つでもミスをしたら表彰台に上がれない。シニアに絶対上がりたかった」と何とか3位に入り、五輪への第1歩を踏み出した。グランプリ(GP)シリーズの出場権も得て、ここから全てが動き始めた。

 高く、勢いのあるジャンプが持ち味。だが、それだけではシニアで戦えないことを今季の序盤で知った。練習中には母に動画の撮影を依頼した。

 「前まではしなかったんですけれど、複雑な動きを適当というか雑にやってしまうと、汚く見えてしまう。そういうのを見返して『ここはダメ』『この動きはいい』っていうのを結構発見できるんです」

 手元にはフランス人振付師ブノワ・リショー氏の「お手本動画」があり、移動中にそれと見比べる。フィギュアに対する取り組みが一変し、昨年11月のGPスケートアメリカでの2位を機に、右肩上がりの成長で五輪切符をつかんだ。

 素顔は神戸野田高に通う女子高生。1学期にはホームルーム委員を務め「学年で大縄大会があって体操をするときに、前に立って『わあ~』って叫びながら体操しました」。学校は「行くだけで楽しくで、すごく笑えてくる」と声を弾ませる一方「行くまでが大変なんですけれどね、眠すぎて」と頭をかく。

 何事にも全力でたどり着いた大舞台。「ここまで勢いで来られたので、フリーはそのまま突っ走っていけたらいいと思います」。23日のフリーでもスマイル全開の「かおちゃん」を披露する。