渡部暁斗(29=北野建設)が5位にとどまり、14日の個人ノーマルヒル銀に続くメダル獲得はならなかった。

 前半ジャンプ(ヒルサイズ=HS142メートル)で134メートルを飛んで48人中トップに立ったが、後半距離(10キロ)で順位を落とした。ルゼック金、リースレ銀、フレンツェル銅と、ドイツ勢がメダルを独占。永井秀昭(34)は12位、山元豪(23)は16位、渡部善斗(26)は20位だった。

 渡部暁は淡々とレースを振り返った。「厳しかったですね。前半、とりあえず逃げてみようとハイペースで入って、そこで力を使ってしまった。自分が仕掛けようと思ったところで、最後の力を振り絞って仕掛けてみたんですけど、少し至らなかった」。

 前半ジャンプでトップに立ったが、ノーマルヒルで振り切られた4位のフレンツェルとは24秒差。そこから10秒以内にルゼック、リースレが続く後半距離へ「正直厳しい。かなり厳しい戦いになります」と苦しい展開は覚悟していた。

 予想通りに6・5キロ地点で後続に追いつかれ、6人の先頭集団が出来上がった。8・5キロ過ぎにギアを上げたがライバルたちを引き離せず、他の選手とスキーが接触してバランスを崩す不運にも見舞われて逆に突き放された。ゴール後は雪上に倒れ込んでしばらく動けないほど消耗し、「接触がなくても結果は変わらなかった」と潔く負けを認めた。

 「格好良さ」を求めてきた。4年前のソチで銀メダルを獲得した時の自分を「僕が子どもだったら憧れる存在ではなかった」と振り返るが、今は違う。ジャンプが飛べて、距離でも海外勢と互角に渡り合い、勝つための駆け引きを展開する。昨季後半からジャンプを改善したことで安定感が増し、今季のW杯で5勝を挙げて個人総合で首位に立つ。「今の自分なら格好いいと思えるかもしれない。納得できることが出始めている」。ノーマルヒルに続くメダル、悲願の金はならなかったが、理想を追い求める姿勢が渡部暁を世界のトップに押し上げた。

 22日は今大会の最終戦となる団体戦がある。「今日はあまりいいレースができませんでしたけど、しっかり修正してメダルが取れるように僕もいい仕事がしたいです」。気持ちを切り替え、エースが最後の力を振り絞る。