【DeNA南場オーナー連載〈5〉】今でも焼き付く亡夫の雄たけび 心震える野球の力

「人生のある瞬間をくくり出すときに、そこには野球が入り込んでいる。ある状況を思い出すときに、野球が自然と記憶をよみがえらせる役割を果たす。野球というのは、そうやって深く人生に入り込んでいるんです」――南場智子(2018年12月13日掲載。所属、年齢などは当時)

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突然、隣に座る夫が、打席に立った筒香にスマホを向け、録画ボタンを押した。2016年(平28)10月、DeNAにとって初のクライマックスシリーズ。巨人との決戦に、南場は闘病中の夫・紺屋勝成氏とともに東京ドームへ応援に向かった。

南場オーナーが、野球の力を思い知った場面。延長11回に嶺井が勝ち越し打を放つと、今は亡き夫がスタンドで絶叫した=2016年10月10日

南場オーナーが、野球の力を思い知った場面。延長11回に嶺井が勝ち越し打を放つと、今は亡き夫がスタンドで絶叫した=2016年10月10日

初戦。1点を追う展開で、スマホ画面に映る主砲が、右翼スタンドへ逆転2ランを放つ。歓喜に沸く左翼スタンドをそのまま写し続けた。

分け目の第3戦。嶺井が打った延長11回勝ち越しタイムリーには、スタンドから絶叫した。

亡くなる2カ月前のことだった。この夫の姿に、南場は野球の力を思い知る。

南場 腹の底から大きな声を出したんです。今思うと、それが彼の最後の雄たけびだった。野球というのは、こんなにも心を震わせるのかと。生きざまに入り込むことができるパワーのあるスポーツ。主人にとって、とても大事なものだった。その奇跡の録画と雄たけびを見て、野球が彼に生きがいを与えていたんだなって実感しました。

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