【阪神・牧丈一郎】「湯浅の投球見て…」同期を活力に再出発/さよならプロ野球〈7〉
引退―。プロ野球選手にとって不可避の岐路は、新たな人生への「入団」でもあります。オフ恒例の大河企画「さよならプロ野球」で、青年たちの希望の光を追います。第7回は阪神・牧丈一郎編。
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★17年ドラフト6位
3人の男のおえつが、しばらく止まらなかった。
10月4日、兵庫・西宮市の鳴尾浜球場に隣接する阪神の選手寮「虎風荘」内のコーチ室。
戦力外通告を受けた牧丈一郎投手(23)は、平田2軍監督(現1軍ヘッドコーチ)、安藤2軍投手コーチ(現1軍投手コーチ)の前で泣いた。2人も肩を震わせていた。
◆牧丈一郎(まき・じょういちろう)1999年(平11)9月23日生まれ、京都市出身。中学では京都嵐山ボーイズに所属、中3で全国大会出場。NOMOジャパンにも選ばれた。啓新(福井)では1年秋からベンチ入りしたが甲子園出場はなし。19年オフから育成契約になった。丈一郎の名前は両親が大ファンの人気ボクサー辰吉丈一郎にちなんだ。181センチ、83キロ。右投げ左打ち。
「何も結果が残らなくて、すいません…」
何度も謝った。謝ることしかできなかった。プロ5年間で1軍登板なし。17年ドラフト6位で入団してから、ずっと面倒を見てくれた。初勝利の記念球をプレゼントできなかったことが、何よりの心残りとなった。
「安藤さんは、18歳から一緒に、つきっきりでやってくれて。平田さんは、ことあるごとに泣いてくれた。育成に落ちた時、支配下に上がれなかった時。ほんとにかわいがっていただきました」
悔いがないと言ったら、うそになる。ただ、野球とは区切りをつけた。ある感情が理由の1つになった。
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