【名伯楽へ】落合博満氏の助言「お母さん目線」の真意/ヤ伊藤智仁コーチの哲学〈前〉

ヤクルトのリーグ2連覇を支えた伊藤智仁投手コーチ(52)の指導哲学とは。03年に現役引退し、04年からヤクルト2軍投手コーチに就任。今季で指導者として20年目を迎えました。心に刻んでいるのは「お母さん目線」と「どう選手の背中を押すか」-。前編です。(敬称略)

プロ野球

木沢へ「シュート」助言…大ブレーク

ここ2年連続で2ケタ勝利投手は0。規定投球回到達もエース小川1人だけという中で、投手陣の底上げを図り、昨年29年ぶりの連覇を達成した。

伊藤絶対的なピッチャーがいないだけに、そこは数でカバーしていくと、キャンプから思いながらやってたんですけど、その数もそろわず。その中でも、小川や(サイ)スニードが、1年間(ローテで)回ってくれたのは、良い方の想定外。あとは先発がいないところを木沢と大西がイニングを投げてくれたので、チームとして助かったかなという感じですね。

◆伊藤智仁(いとう・ともひと)1970年(昭45)10月30日、京都府生まれ。花園-三菱自動車京都を経て92年ドラフト1位でヤクルト入団。1年目に新人王。その後は3度の手術を受けるなど右肩痛に苦しみ、03年引退。通算127登板、37勝27敗25セーブ、防御率2・31。04年から2軍、08年から1軍の投手コーチ。18年にBC・富山の監督に就任。19年に楽天1軍投手チーフコーチ。21年から1軍投手コーチとしてヤクルトに復帰。185センチ、85キロ。右投げ右打ち。

20年ドラフト1位の木沢は、21年は1軍登板なしに終わったが、昨季はともにチームトップタイの55試合に登板し、9勝を挙げる大ブレーク。今や最大の武器となる150キロ台中盤のシュートにも、伊藤の助言が大いに生かされている。

伊藤キャンプの段階で彼がシュート回転を直そうとしているのを「別にシュート回転するのは悪くないんだから、逆にシュート投げちゃえばいいじゃない」って。球強いんだからね。短所と思わず長所と思えば。逆転の発想というか、それで思い切ってストライクゾーンに投げれば何とかなるよと。

キャッチボールする高梨裕稔を、斜め後ろのアングルからチェック。投手の向上心をあおるスタイル=2022年9月

キャッチボールする高梨裕稔を、斜め後ろのアングルからチェック。投手の向上心をあおるスタイル=2022年9月

21年の古巣復帰以来、投手陣にはレベルアップのため常に挑戦を求めている。

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