権藤監督の「バカタレ!」に佐伯が燃えた 優勝決定の舞台は甲子園へ/連載17
横浜DeNAベイスターズの1998年(平10)以来となる優勝を祈念する企画連載の第17弾は、優勝に王手をかけた試合です。地元横浜での優勝決定が難しくなって重苦しいムードが漂いましたが、10月6日のヤクルト戦(横浜)で権藤博監督から「バカタレ!」とゲキを飛ばされた佐伯貴弘が、ライトへ決勝3ランを放ち、いよいよマジック2と王手をかけました。優勝決定の舞台は甲子園へと移りました。
プロ野球
地元優勝の期待
マジック9を点灯させた時点で、16試合が残っていました。そのうち横浜スタジアムでの試合が9試合。こうなると本拠地で優勝を決めたいという欲も出てきます。
いや、プレーする選手たちはともかく、ファンや報道陣からは「横浜で胴上げ」という声が大きくなりました。
9月28日に1度マジックは消えますが、10月1日に2位中日に勝ってマジック5が再点灯します。
この日、試合前の円陣で、選手会長の石井琢朗が「今日は9月31日ではなく10月1日です。月が変わったので気分も変えていきましょう」と声をかけ、ナインの大爆笑を誘いました。この頃は、自然体でプレーできていたのです。
翌2日も中日に勝利し、マジックは3に減りました。優勝争いのまっただ中、2位中日に7連勝は圧巻です。なお、この日は編成担当の宮里太、スコアラーの板倉賢司が、西武ライオンズを視察するため西武ドームを訪れました。日本シリーズでの対戦が濃厚な相手を研究し始めたのです。
3日はヤクルト伊藤智仁に完投を許して敗れました。2位中日が勝利したため、マジックは3のまま。この試合を報じる4日の日刊スポーツは「横浜ピンチ」という見出しがつきました。
優勝を目指す上では決して痛い敗戦ではありません。ピンチなのは「地元での胴上げ」です。中日は3日間試合がないため、横浜スタジアムで胴上げするためにはベイスターズが3連勝するしかなくなりました。
ところが4日もヤクルト川崎憲次郎、高津臣吾の継投リレーに封じられます。5日もヤクルト石井一久に毎回11奪三振を喫し、マジック3のまま3連敗となりました。最短での優勝決定は7日に甲子園で行われる阪神戦に伸びてしまいました。
試合後の権藤監督は「選手たちに焦りはないよ。焦っているのは私だけ。マジックは消えた方がいいんじゃないか」と、なかばやけ気味のコメントを残しました。
38年ぶり…横浜スタジアムでは初めての優勝に向かっているわけですから、地元で決めてほしいという期待も当然です。ただ、その点がことさら注目されたため、優勝目前とは思えないような、重苦しい雰囲気が漂っていました。
敗戦コメントを求める報道陣に対し、キャプテンの駒田徳広が「優勝することが先決だから、この連敗で焦る必要はない。僕らが一番優勝に近いところにいるのは間違いないんですから。地元で優勝できれば尚うれしいけど、目標の順番を間違えてはいけませんよ」と、務めて明るい口調で話していたことが印象に残ります。
「燃えていましたよ」
さて、重いムードで迎えた10月6日のヤクルト戦(横浜)。先発の三浦大輔が初回に先制点を奪われます。2、3回も走者を出しますが、なんとか無失点に抑えました。三浦の真骨頂といえる、粘りの投球で踏ん張っていました。4回は初めての3者凡退に抑えます。その裏、重いムードが一変しました。
先頭の鈴木尚典が二塁打で出塁すると、続くロバート・ローズのタイムリー二塁打で同点に追い付きます。さらに駒田もヒットを放ち、無死一、三塁。
ここで打席に入った佐伯貴弘が、ライトへ高々と舞い上がる打球を放ちました。右翼ポールを巻いてスタンドに落ちると、佐伯は一塁側ベンチに向かい、両手を高々と上げました。
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1969年(昭44)生まれ。横浜出身。
93年に入社し、プロ野球の横浜(現DeNA)、巨人、大リーグ、NPBなどを担当した。著書「松井秀喜 メジャーにかがやく55番」「イップスは治る!」「イップスの乗り越え方」(企画構成)。
日本イップス協会認定トレーナー、日本スポーツマンシップ協会認定コーチ、スポーツ医学検定2級。流通経大の「ジャーナリスト講座」で学生の指導もしている。
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