大谷翔平WBC決勝での名ペップトークに学ぶ/指導者必読の連載〈6〉

スポーツ指導の現場では、なぜ体罰や暴言が続くのでしょうか? 今年に入ってからも体罰によって指導者が処分される事件が後を絶たず、暴行により逮捕される事案もありました。大阪市立桜宮高のバスケットボール部主将が、顧問を勤める教員の体罰を苦に自殺をしてから10年が過ぎ、4月25日には、スポーツ5団体が「スポーツ界における暴力行為根絶宣言」を表明してから10年という節目を迎えます。指導に携わるさまざまな人々の証言から、あらためてスポーツ指導を考えます。第6回は、指導者の視点に移ります。一体どんな状況で体罰を用いてしまうのか? 

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体罰で処分を受けた指導者にも話を聞いた。

千葉県内の高校職員として、野球部を指導していたIさんは、生徒を殴り、差し歯が外れるけがを負わせてしまった。学校に退職届を出し、監督だけでなく、職も失った。

ある生徒が注意を受けても装飾品を外さず、チームで決められたあいさつもせず、練習でもふてくされた態度をしていた。指導のため呼び出したところ、生徒が舌打ちをしたのだという。ここで手が出た。

「どのような状況であれ、手を出してはいけませんでした。それまで頑張っていた主力の生徒でもあり、何とか指導したいという思いが強く、感情的になってしまいました」

職を辞してから数カ月が過ぎた。振り返り、その時どうすべきだったと思うか。そう問うた。

「愛情を持って突き放し、自分で気付いてもらう方法もあったと思います。他の先生と協力し、役割分担をして指導することもできました。手を出してしまったのは、私の指導力のなさです。それは間違いありません。でも…」

しばらく沈黙し、言葉を選んでから続けた。

「生徒に問題があれば、やはり指導はすべきだと思います。指導者が自分の身を守るため『面倒な生徒は放っておけばいい』という方向に進んでいる気がしますが、それではいけないと思います。ただ、どう指導すればいいのか、個々だけで対応は難しいです」

取材では、指導法に迷う指導者の声も数多く聞いた。

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編集委員

飯島智則Tomonori iijima

Kanagawa

1969年(昭44)生まれ。横浜出身。
93年に入社し、プロ野球の横浜(現DeNA)、巨人、大リーグ、NPBなどを担当した。著書「松井秀喜 メジャーにかがやく55番」「イップスは治る!」「イップスの乗り越え方」(企画構成)。
日本イップス協会認定トレーナー、日本スポーツマンシップ協会認定コーチ、スポーツ医学検定2級。流通経大の「ジャーナリスト講座」で学生の指導もしている。