浦和3位、ワシ惜別の2発/クラブW杯
- 前半35分、同点ゴールを決めガッツポーズする浦和FWワシントン
<クラブW杯:浦和2-2(PK4-2)エトワール・サヘル(チュニジア)>◇16日◇横浜国際◇3位決定戦
浦和がアジア代表初となる世界3位の快挙を成し遂げた。クラブW杯3位決定戦で、アフリカ代表のエトワール・サヘル(チュニジア)と激突。前半35分、後半25分に、この試合を最後に退団するFWワシントン(32)が2ゴールを挙げた。守備陣のミスから2失点し、90分間で決着つかずPK戦に突入したが、GK都築龍太(29)の好セーブなどで、4-2で勝負をつけた。規律の厳しいオジェック監督(59)に対する反発のパワーで選手が結束し、浦和が日本サッカーに歴史を刻んだ。
GK都築が4人目のMFトラウイのPKを足で止めた瞬間、ワシントンはこみ上げた涙を抑えられなかった。大喜びで走るチームメートに加わらず、ベンチコートを脱いでひざまずいた。目頭を押さえて泣いた。「チームと別れるのは悲しい。ボクをクビにした男を救ったのも悔しかった」。確執の続いたオジェック監督を見返すように堂々と胸を張った。
前半35分、相馬の左クロスに誰よりも高く跳んだ。相手DFを突き飛ばしながら気迫のヘッドで先制弾。後半25分には、ペナルティーエリア左からの永井のFKをDFネネの背後に走って再び頭で合わせた。前夜宿泊先でのクラブとの交渉で正式に退団が決定。気持ちの区切りをつけてピッチに立っていた。試合後には控室で退団のあいさつを済ませた。浦和サポーターのワシントンコールを耳にしながら「チームメートには感謝の気持ちを伝えた。監督は言いたくなかっただろうが『チームに貢献してくれてありがとう』と言われた」と明かした。
反発心が原動力の、今季の浦和を象徴する試合だった。ワシントン以外の選手も開幕当初からオジェック監督の采配に不満を蓄積させた。試合ごとに変わるシステム、選手の持ち味を消す規律の徹底…。「監督の策には矛盾がある」「意図が分からない」との声が続出。なかでもワシントンはあからさまに何度も造反。5月には勝っているにもかかわらず、先発から外された小野も公然と采配を批判した。
起用法の不満は終盤まで続いた。選手間からは「ギド(ブッフバルト監督)と違い、選手とは距離を置くし、あまり話さない」「監督は何をしたいのか見えない」とまで口にした。そんな厳格かつ規律徹底の指揮官に対する反発心が逆に、選手の結束を固めた。リーグ戦V逸後、選手たちは「監督は関係ない。ここまできたら選手次第」と口にした。ワシントンの号泣に誘われ、もらい泣きした選手もいた。真のプロ集団になった選手の手で、アジア初の世界3位をもぎ取った。
それでも満足はしていない。主将の山田は「Jリーグも取れなかった」と言えば、相馬も「世界3位でもまだまだ」とどん欲だ。中村GMは「クラブW杯出場が目標。他に譲りたくない」。来季はワシントンの代わりに新潟FWエジミウソンが加入。大分MF梅崎も加入確実で、三都主も復帰する。指揮官に反発しながらも結果を残せるプロ集団の浦和が、来季もアジアの中心になることは間違いない。【藤中栄二】
[2007年12月17日9時8分 紙面から]
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