子供がスポーツをしていると、あーだ、こーだ、と言いたくなるお父さんいませんか? 

 実はですね。私のせがれもサッカーをしておりまして。全国大会に出ることを目標にしているものですから、ついつい。コーチに「お父さん、ちょっと…」と止められるくらい、思わず口を出してしまうわけなんです。ホント、困ったオヤジです、私。

 なんで、こんなことを書いているかと言いますとね。7月13日に米ニュージャージー州にあるトランプナショナルGC(6732ヤード、パー72)で開幕した全米女子オープン。初出場した川岸史果(22)のキャディーを務めたのが、日本男子ツアーで6勝を挙げている父の良兼(50)でした。初めての“父娘タッグ”は、残念ながら通算7オーバーの99位で予選落ち。試合後の父のコメントを読むと、まだ未熟だと考えている娘へのいら立ちと、同じ胸の内に潜む愛情。そんな対照的な2つの感情が混在したような、何とも言えない“オヤジの本音”があるように思えてならなかったのです。

 予選落ちが決まった14日(日本時間15日)のホールアウト後に、父は言った。

 「俺はもう(娘のキャディーは)やらない。いい記念になりました。(娘が)アイアンをこするたびに、俺の肩にどんどん(バッグの)重さが増していきましたからね。ズバーッと打ってくれたらね。まあ、アイアンショットは、ひどかったね」

 オヤジの“愚痴”は止まらず「ショートアイアンで打っているのだから、それなりのショットを打てないと話が始まらない。アイツ、ドライバーは曲がらなかったから、俺がセカンドをやったら、アンダーパーで回れたのにね」とぼやき続けたそうだ。

 イライラしながらも、やっぱり娘はかわいくて仕方がない。そんな、素直に子供には伝えられない不器用な愛情が、にじみ出ているような気がしました。

 7オーバーと乱れた第1日を終えると、モヤモヤした思いを抱えながらも、父は直接、娘には何も言わなかった。それでも、どうしてもひと言だけ、伝えたかったのでしょう。苦しんだアイアンを打つ際に「足のラインが左を向いている」という助言を、父は娘にではなく、母麻子さんに話した。

 父のアドバイスは、母を経由して娘へ-。

 史果は苦笑しながら「母から聞きました。いつも、そんな感じです」と漏らした。

 娘は「私が6番を持ちたいと言っても、ここはユーティリティーの方がいいんじゃないか…とか。意見の対立はありました」と言いながらも「意外と、父の意見の方が良かったのかな」と大人の対応を見せた。

 父は「(予選落ちした)痛い目も、これは将来、記念になる。記憶からは消えない。でもまあ、かわいそうな部分もあった。修正しようとして、できなかったのは、俺の力不足。そんなにうまくは(娘に)言えないですね」と、娘をかばう言葉を残した。

 娘は父の背中を追い、まだ現役の父は、娘には追いつかれまいとする。

 「まだまだアイツには負けない。娘には負けられないね」

 いい父娘だなあ…。そんなことを思いながら、つい、だらだらとこのコラムをつづってしまったのです。【益子浩一】