その背中をずっと見ていたいと思わせる人がいる。男子ゴルフのレジェンド尾崎将司(72)のことだ。2月23日、千葉県内で開催された「ジャンボ尾崎ジュニアレッスン会 supported by ISPS」を取材した。

醸し出すオーラは半端ではない。その偉業を知らない世代であろう参加したジュニア選手も、存在感に「緊張する」と明らかにビビリながらのスイング。「もっと力強く振れ」と言っても、体が固まっているのだから、それは無理な注文。いるだけで緊張感を漂わせる選手はなかなかいない。見ているだけでこちらは痛快だった。

レッスン後、取材に応じ今季に向けた思いを吐露した。「ラストイヤーのつもりでやる」。この「ラストイヤー」の言葉は、ここ数年、毎年口にしている言葉。もはや「恒例」とも言えるが、そこには72歳になっても備える戦う覚悟を伝えている。

ツアー通算113勝と偉大な記録を持つ尾崎も、昨年のツアー出場は、自身最少となる7試合(4試合で途中棄権)だけだった。13年4月のつるやオープン以来、予選突破もしていない。持病の腰痛の影響もあってか、思うような結果が出せていない。世間には「なぜ引退しないのか?」という声があるのも確か。ただ、答えは明白。「俺にはゴルフしかない」。

数十年もの現役生活を経て数々の記録を打ち立てても、自身が追い求める理想のゴルファー像にはたどりついていないのであろう。シニアツアーには出場せず、レギュラーツアーにこだわり、上を目指し続ける理由がそこにあると思う。

厳しいトレーニングを重ねるオフシーズンを「一番楽しい時期」と話す。今オフも「振る力を自分に求めている。振る筋力をつけないといけない。去年、思い知った」と、昨年の反省から毎日、重さの違う20種類近くの特注クラブを200スイングすることを課していると言う。この、あくなき求道精神が現役生活を支えて続けている。

近年は、アスリートの現役生活が劇的に伸びた。それでも、72歳でのそれはやはり異例中の異例と言える。ただ、その姿はきっとゴルフファンだけでなく、多くの人の心にきっと何かを伝えてくれるはず。実際、不惑をとうに過ぎ、衰えを感じずにはいられない記者に、「俺もまだまだ」と思わせてくれる貴重な時間になったのは言うまでもない。

今年はどんなプレーを見せてくれるのか? 初戦は、4月の東建ホームメイト杯(三重)になる予定だ。「自分の体にムチを打って良い稽古している。もしかしたら話題を提供できるかもよ」と周囲の期待感をさらにあおってみせた。ゴルフ界の中心には、いまでもジャンボが君臨している。【松末守司】