河本結(2019年3月31日撮影)
河本結(2019年3月31日撮影)

まだ高校1年だった2人の少女は、こんな日が来ることを想像していただろうか-。

19年3月31日。宮崎・UMKカントリークラブで開催されたアクサ・レディースで、ツアー本格参戦1年目の河本結(20)が初優勝を飾った。

それから約16時間後。

遠く離れた米カリフォルニア州・アビアラゴルフクラブであった米ツアー・起亜クラシックを制したのは、畑岡奈紗(20)だった。

およそ5年前に出会った2人は、偶然にも、日本とアメリカで同じ日に優勝した。

中学を卒業すると、河本は一時期、愛媛の親元を離れた。本格的にゴルフの腕を磨くため、茨城県にある日本ウェルネス高に進学。わずか数カ月で愛媛に戻り、松山聖陵高に編入することになったが、振り返れば、その短い期間がゴルフ人生の転機になった。

茨城出身の畑岡と出会い、国体の合宿で過ごした時間を、今でも覚えている。

一緒に風呂に入った時のこと。まだ中学を卒業したばかりの畑岡は、時計の針を見ながら熱い湯船につかっていた。しばらくすると、冷水に体を沈める。そんなことを何度か繰り返すのが不思議で、河本は尋ねた。

「何で、そんなことをするの?」

15歳の畑岡は、こう答えたのだという。

「明日にね、疲れを残したくないから。こうすると、疲れが体に残らないんだよ。疲れがたまると、プレーに影響が出るでしょう?」

食事会場では、好きなものだけを食べるのではなく、栄養バランスを考えながら皿に盛りつけていたという。そんな姿を見て、河本は大きな影響を受けた。

「あの頃から、ナサ(奈紗)は、私たちとは、ゴルフとの向き合い方が違っていました。お風呂で、みんながガールズトークをしていても、ナサはずっと交代浴を繰り返していましたから。食事は、体が酸化しないようにとか、次の日に疲れが残らないことを考えて、食べていました」

高校時代から高い意識を持ち続けてきた畑岡は、やはりこの世代の先頭を走る。まだ20歳ながら、重ねた勝利は国内3勝、米ツアー3勝。あの日から、ずっと河本は畑岡を追い続ける。

17年末にあった第3QT(予選会)では、わずか1打及ばずツアー出場権を逃した。遠回りや、挫折、足踏みをしながらも、1歩ずつ前へと進んできた。それは、畑岡という大きな存在があったからだろう。

初優勝したアクサ・レディースの会見で、河本はこんな思いを語った。

「小さい頃からの夢を、諦めずに、曲げずに、やってきました。どん底を味わっても、泥水を飲んでも、一生懸命やっていたら、いつか夢はかなうと思っていた。やっとひとつ、夢がかなった。次の目標は、来年には賞金女王。3年かけて、全米女子オープンを取る準備をしています」

畑岡に追いつき、追い越す日は訪れるだろうか。

いつか、2人が米ツアーで優勝争いをする日を、楽しみにしている。【益子浩一】

(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)

畑岡奈紗(2018年5月2日撮影)
畑岡奈紗(2018年5月2日撮影)