300号記念プレートが、巨人坂本勇人の手に渡るまで 持ち手3人の物語

巨人坂本勇人内野手(37)が5月13日の広島戦(福井)で通算300本塁打を達成しました。同点の延長12回裏に、逆転サヨナラ3ランを放つ、面目躍如の記念弾となりました。王手をかけてから約1カ月、その瞬間を心待ちにしてきた後輩や仲間たち。その証言から、記念の舞台の裏側を描きます。

プロ野球

★坂本勇人300号の舞台裏

  • 後輩・増田陸が語る「師匠」への誓い
  • 記念プレートを持ち続けた広報の苦労と執念
  • トレーナーが明かす20年の継続力の秘密

◆坂本勇人(さかもと・はやと)1988年(昭63)12月14日、兵庫県伊丹市生まれ。青森・光星学院(現八戸学院光星)で06年春の甲子園に出場。同年高校生ドラフト1巡目で巨人入団。12年最多安打、16年首位打者、最高出塁率、19年リーグMVP。ベストナイン7度、ゴールデングラブ賞6度。昨季は62試合の出場で打率2割8厘、3本塁打、22打点。25年までプロ通算2272試合、2447安打、打率2割8分7厘、298本塁打、1060打点。今季通算300本塁打達成。186センチ、86キロ。右投げ右打ち。

巨人対広島 12回裏巨人1死一、二塁、逆転サヨナラ3点本塁打を放つ坂本勇人(撮影・増田悦実)

巨人対広島 12回裏巨人1死一、二塁、逆転サヨナラ3点本塁打を放つ坂本勇人(撮影・増田悦実)

球場が沸騰した福井の夜

乾いた打撃音が、余韻を残す間も無く、すぐにかき消された。

「うわーーー!」「うおーーー!」

その場にいた誰もが即座に声をあげた。オレンジ色をまとっていようが、赤色をまとっていようが。

球場が沸騰した。

背番号6が視線を上げる。福井の夜空を見上げる。

握ったままのバットを白球の行く先の右翼席の方に掲げたまま、弾むように一塁方向にステップした。

巨人対広島 12回裏巨人1死一、二塁サヨナラ3点本塁打を放つ坂本勇人。通算300号本塁打を達成(撮影・たえ見朱実)

巨人対広島 12回裏巨人1死一、二塁サヨナラ3点本塁打を放つ坂本勇人。通算300号本塁打を達成(撮影・たえ見朱実)

およそ4秒後。

「やっぱりーー!!」「すげーーー!」「いやあーーー!」

サヨナラでの通算300号本塁打を告げたボールがスタンドで跳ねると、誰もが口を大きく開けて、叫んでいた。

驚嘆と納得。

これぞ、坂本勇人。

ベンチから思わず飛び出していった選手たちも飛び跳ねた。

巨人対広島 12回裏巨人1死一、二塁、通算300号となる、逆転サヨナラ3点本塁打を放ちガッツポーズをする坂本勇人(撮影・増田悦実)

巨人対広島 12回裏巨人1死一、二塁、通算300号となる、逆転サヨナラ3点本塁打を放ちガッツポーズをする坂本勇人(撮影・増田悦実)

巨人対広島 12回裏巨人1死一、二塁、サヨナラ3点本塁打を放った坂本勇人を祝福するナイン(撮影・たえ見朱実)

巨人対広島 12回裏巨人1死一、二塁、サヨナラ3点本塁打を放った坂本勇人を祝福するナイン(撮影・たえ見朱実)

ベースを一周してホームインした坂本の周りに、ウォーターシャワーの祝福の輪ができる。ハイタッチを繰り返すナインへ、ベンチから声が飛んだ。

「陸! 陸!」

耳に届いた佐々木俊輔がベンチに盗塁の勢いで引き返してきて、その手にあるものを受け取ってきびすを返す。

増田陸はその姿を見つけた。

その手にはプレートがあった。

「300」と記された写真入りの1枚。

約束の1枚を大事に受け取ると、ゆっくりと坂本のもとへ歩み寄った。

そして、お辞儀するようにしながら、両手で丁寧に差し出した。

笑顔で360度、球場の皆に感謝するように掲げる師匠の姿を見ながら、もう、ありきたりな言葉しか出てこなかった。

「本当に、すごいな」

余計な装飾を排させるような、生のままの感情でしか受け止められないような。

「すごい、格好いい」

野球少年のように、拍手しながら、見つめていた。

増田陸の「予約」

予約していた。

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2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて17年。25年4月に初の異動で野球部へ配属となりました。競技経験はありませんが、現在は息子が通う少年野球チームで“球拾い”コーチとして奮闘中。記者としても、様々な話題を拾います。ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。クラフトビール好きです。