子供と笑顔でタッチする渋野日向子(右)(2019年8月16日撮影)
子供と笑顔でタッチする渋野日向子(右)(2019年8月16日撮影)

AIG全英女子オープンを制した渋野日向子(20=RSK山陽放送)の強さの秘密の1つは、ギャラリーを味方に付けることだと思う。女子ゴルフの応援というと、最近はごひいきの選手の応援団的なギャラリーが増えてきている。その選手のショットやパットにだけ反応し、他の選手はスルー。それも、1つの応援の形だが、渋野は違う。

全英オープンで何度も見た光景。そのキュートな笑顔と、コース間の移動の際のギャラリーとの交流。ハイタッチや、小さな子どもを見かけると、必ず立ち止まって手を合わせたり、頭をなでたりのサービス。「プレー中に何もそこまで」と言う人もいるだろう。しかし、渋野はその行為によって、英国人を完全に自分の味方に付けてしまった。その声援を受けて、42年ぶりのメジャー優勝を勝ち取った。

しぶこフィーバーで、先日開催されたNEC軽井沢72大会のコースにも、3日間で2万1844人のギャラリーが訪れた。ギャラリーの声援について聞かれた渋野は「自分はソフトボールをやっていたので、団体競技で勝利を分かち合いたいという気持ちがある。だから、ギャラリーともバーディーを取って、喜びを分かち合いたいと思う」と話していた。

ゴルフは個人競技だが、だからこそ、優勝争いでのギャラリーの声援は、選手をよりよいパフォーマンスに導く起爆剤となる。サッカーの成熟した欧州や南米では、サポーターの声援が多いホームチームの勝率が高い。渋野は、ギャラリーを味方につけることで、ゴルフ場内を、完全ホーム状態にしているとも言える。

別に、むずかしいことではない。ギャラリーにこびる必要もない。ただ、笑顔だけでいい。渋野を見て、そう思った。【桝田朗】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)

NEC軽井沢72トーナメント最終日、ギャラリーの声援を受け、ティーイングエリアに向かう渋野日向子(2019年8月18日撮影)
NEC軽井沢72トーナメント最終日、ギャラリーの声援を受け、ティーイングエリアに向かう渋野日向子(2019年8月18日撮影)