AIG全英女子オープン覇者の渋野日向子(21=RSK山陽放送)が賞金女王“ミラクル戴冠”を逃した。「単独2位以上」を前提条件に、首位と2打差3位でスタートしたが、70と伸ばしきれず通算7アンダーの281で2位。賞金ランクも2度目の女王戴冠となった鈴木愛に約757万円差の1億5261万円で2位に終わった。

だが「1位は早いよ、と神様が与えてくれた試練」と前向き。大ブレークした今季を「謎」と表現した。来季は「謎」でなく、東京オリンピック(五輪)出場、金メダルを現実のものにする。

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最後は「スマイル・シンデレラ」になった。最終18番パー4。バーディーを奪っても、優勝にも、賞金女王にも届かない。それでも、渋野は「一番、気持ちが入った」と2・5メートルのチャンスを決めた。体を伸ばして、笑った。

「最後のバーディーで悔い(は)ないな、と。スッキリしました。第1打は今日イチのドライバー。第2打を5番アイアンでダフッてグリーンに乗せ、そこも笑け(え)る。私を象徴する、本当にいい終わり方」

今季国内5勝目へ、ツアー本格参戦1年目で初の国内メジャー2冠へ、全力を尽くした。アウトをオール・パー。11番パー5で2・5メートルのパーパットをねじ込み、スイッチが入った。12番パー3は9番アイアンでピン根元に落とす、30センチのベタピンショットで初バーディー。13番の連続バーディーで通算7アンダー。しかし、そこまでだった。

「単独2位以上」なら、鈴木の結果次第で可能性があった女王戴冠も逃した。ただ「賞金ランク2位」に意味はある。「1年よく頑張ったと神様が与えてくれたご褒美。まだ1位は早いよ、と与えてくれた試練かもしれません」。昨年のプロテストに合格した新人が、8月初旬の全英制覇で世間をあっと言わせた。

だが、帰国後は思いとかけ離れた「スマイル・シンデレラ」のイメージが独り歩きした。「9月の日本女子プロあたりですかね、一番しんどかったのは。(国内)メジャーだから、結果出さなきゃと自分を追い込みすぎて」。期待に応えたい一心で空回りした。

「全英後、本当にたくさんの人に支えられました。自分1人じゃ絶対にやっていけなかった。感謝しかない。それを今まで以上に実感できたのが、財産。これからのゴルフ人生に生かしたいです」

訳もわからぬうちに大ブレークした2019年。一言で表現するなら「謎」と言い爆笑した。しかし、2020年は違う。最大の目標は「東京五輪」出場だ。「金メダル、取りたいですね~」。来季は2月のホンダLPGAタイランドの推薦出場、翌週のHSBC女子世界選手権(シンガポール)と米ツアー競技で実戦をスタートさせる予定。「東京オリンピックに向けて、しっかりやっていきたい」。これからは「謎」で終わらせない。【加藤裕一】