昨年と統合された今季9勝、今年8勝の稲見萌寧(22=都築電気)が、初の賞金女王に輝いた。

【賞金ランキング】国内女子>

今季最終戦の今大会を、賞金ランキング1位として迎え、同2位の古江彩佳とは1696万8474円差。最終ラウンドは15位から出て4バーディー、3ボギー、1ダブルボギーの73で回り、通算イーブンパー、288。1つ落としたが、5人が並ぶ9位タイに順位を上げた。稲見が単独13位相当の賞金108万円を獲得すれば、古江は優勝するしか逆転賞金女王の可能性がない中、古江が3位に終わり、初戴冠を果たした。三ケ島かながツアー初優勝を果たし、小祝さくらが2位に入った。

稲見は出だしの1番パー4をバーディー発進した。第2打をピン手前4メートルにつけて幸先よく伸ばした。だが伸ばしたいパー5の2番をパーで通過すると、3番パー4では痛恨のダブルボギーを喫した。グリーン手前のラフから、ピンまで20ヤードの第3打を4メートルオーバー。パーパットを1メートル余りオーバーすると、返しのボギーパットまで外し、ぼうぜんと立ち尽くした。さらに続く4番パー4も3パットを喫してボギー。悪い流れは止まらず、6番パー4でもボギーをたたくと、20位タイまで後退した。

それでも9番パー5、10番パー4で連続バーディーを奪い、息を吹き返した。伸ばしたいパー5の13番を逆にボギーとしたが、17番パー4で4つ目のバーディーを奪取。試合前のリードを生かして逃げ切った。ホールアウト後、まだ古江がラウンド中ながら、今季の自己評価を問われると「最後のこれを『なし』にしたら、100点だと思います」と、満足感を口にしていた。試合が進むごとに順位が動き、場面場面で、賞金女王の条件を満たしているのが稲見だったり、古江だったりと、目まぐるしく入れ替わる大接戦だった。

稲見は22歳122日での賞金女王となった。07年上田桃子の21歳156日に次ぐ、歴代2番目の年少賞金女王。不動裕理に次ぐ、史上2人目のシーズン10勝こそ届かなかったが、今季9勝は、2番目に多い古江の6勝を寄せ付けないダントツの数字だった。何よりも、今夏の東京五輪では、日本ゴルフ界初のメダルとなる銀メダルを獲得。現在も当時も世界ランキング1位のネリー・コルダ(米国)と、終盤まで争い、世界中のゴルフファンに、その名をとどろかせた。

今年最初に発表された、1月4日付の世界ランキングは、フィリピン代表として東京五輪に出場することになる笹生優花を除いても、日本勢5番目の63位だった。そのランキングでは日本勢4番目の鈴木愛が22位。世界ランキングをもとに、原則各国2枠の五輪出場権は“圏外”と言える位置付けだった。だが1日10時間にも及ぶ猛練習で培ってきた技術力、精神力が、一気に開花した。終盤戦は腰痛に苦しみながらも、古江に逆転を許さなかった。新型コロナウイルス感染拡大による、昨年の試合数が減少した影響で、史上初めて2年間が統合されたシーズンは“今季の顔”にふさわしい、稲見の賞金女王初戴冠で幕を閉じた。

【成績】JLPGAツアー選手権リコー杯―>