稲見萌寧(22=Rakuten)が今季14戦目で初優勝を飾った。首位スタートから3バーディー、2ボギーの71。終盤16番で“目玉”のバンカーから会心のパーをセーブする勝負強さを発揮して通算7アンダー、209で逃げ切った。昨年11月伊藤園レディース以来出場16戦ぶりという自身2番目のブランクを経たツアー通算11勝目は、事実上初の完全V。20-21年シーズン9勝の絶対女王が目を覚ました。

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初夏の新潟でウイニングパットを沈めて、稲見が両手を突き上げた。背伸びするような姿に解放感が漂う。優勝インタビューでは「お待たせしてすみません!」。今季ツアー14戦目。18番グリーンを囲んだギャラリーに、笑顔で報告した。

「自分なりに何で勝てないかわかっていたから」と言いつつも「結構焦ってはいて…」と明かす。2週前のブリヂストン・レディースはサンデーバックナインで2打差を守れなかった。

もう負けられない。2打差リードの終盤16番パー3。第1打がグリーン右バンカーで“目玉”になった。「もう“出るの?”という感じ。イメージが全くわかなくて…」。顔の高さにグリーン面、ピンまで25ヤード。絶体絶命のピンチに、自分を信じた。52度のウエッジを少し開いて「上からバーン!」と打つと、ピン下3メートルへ。上りスライスのパーパットをねじ込んだ。

会心のパーが17番パー4で“納得のボギー”を呼ぶ。フェアウエーから打ち下ろし、グリーン奥のピン後方には、前日に落とした池がある。「刻みました。15番ティーにいる時、2人も(池に)入れたのを目撃してたんで」。第2打は花道へ。アプローチを寄せきれずにボギーとしたが、池ポチャのダブルボギーを避ければ…と安全策をとった。

大活躍した昨季の影響でオフは多忙を極めた。調整不十分でシーズンインし、開幕7戦は予選落ち2度、棄権1度。最大の原因は「そり腰」の修正にあった。腰に不安があり姿勢から矯正に取り組んだが、アドレスで重心がわからず、スイングに力が入らない。10戦目のサロンパス・カップから、そり腰対策をストップすると3、3、2位。本来のショットを取り戻した。

次の目標は「まず1勝したから、年間複数回優勝を」と控えめだ。今大会は西郷、小祝、西村、上田、鈴木ら全米女子オープン出場組がおらず、フィールドが薄かった。絶対女王の本領発揮は、これからだ。

◆メルセデス・ランキング 大会の順位を数値化、年間を通した総合的な活躍を示すもの。賞金ランクにある大会ごとの賞金額の差という不公平がない。1位には「年間最優秀賞選手賞」として4年シード、また賞金ランクに代わり50位までに来季シードが与えられる。ポイントは3日間大会(優勝200ポイント)を基準に4日間大会は1・5倍(同300ポイント)、国内メジャーは2倍(同400ポイント)、海外のメジャーは4倍(同800ポイント)が付与される。

◆フル消化で初の完全V 稲見が第1日から首位を守って優勝したのは、36ホール短縮競技の昨年5月中京テレビ・ブリヂストン以来2度目だが、3日間、4日間大会の日程をフルに消化した形では初めて。最終日前日に首位からの逃げ切りVは6度目(19年センチュリー21レディース、昨年の明治安田生命レディース、富士フイルム・スタジオアリス女子オープン、中京テレビ・ブリヂストン、伊藤園レディース)。逃げ切り失敗は昨年のサントリー・レディース、CATレディースと2度あった。