女子ゴルフ界にまたもニューヒロインが誕生した。昨年11月プロテスト合格のルーキー川崎春花(フリー)が「19歳133日」で大会最年少優勝を達成した。8番パー4でイーグル、サンデーバックナインを驚異の30など、今大会&生涯自己ベストスコア64をたたきだし、通算16アンダー、272で4打差逆転V。無名の19歳が新世紀世代の山下美夢有らを破り、故郷京都開催の女子プロNo.1決定戦がツアー初優勝となった。

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実感も、涙もない。最終18番パー4。川崎が8メートルのバーディーパットを沈めると、グリーンが大歓声に包まれた。同組のささきしょうこらが「優勝だよ!」と言ってくれた。スコア提出に向かうと、プロ同期の佐藤心結が抱きついてきた。「おめでとう! すごかったよ!」と言ってくれた。

「全然信じられないって気持ちが一番で、泣くとか(気持ちに)ならなくて。実感もなくて。表彰式で“優勝したんだ”と少し思えましたけど…」

昨年11月のプロテストで第2日に大たたきし、泣きながら練習したコースだ。故郷京都のコースだ。「すごく思い入れがあって、うれしくて」とは言う。しかし、無名の19歳は“はんなり”と笑うだけだ。

歴史に残る猛チャージを見せた。4打差あった首位山下を最終組1つ前で追いかけた。8番パー4、120ヤードをピッチングウエッジで放り込むイーグルを決めた。サンデーバックナインはすさまじい。12番から80センチ、2・5メートル、1・5メートル、5メートルを沈め、4連続バーディー。上がり2連続バーディーと30で回った。

「8番のセカンドは若干ダフってました。18番の第2打もミスって“あ、バンカーだ”と思ったら、8メートルについていた」と笑う。ミスしてもミスにならない流れに身を任せた。

プロ1年目は順風ではなかった。持病だった腰痛に悩み、スイングも崩した。今大会前まで、ツアー出場10戦でトップ10なしの予選落ち6度。「どうしよう…」と落ち込んだ。

今春卒業した大阪学院大高時代を振り返った。「逃げるゴルフになっていた。もっと“攻めるゴルフ”だった。“ビビらず攻めよう”と決めた」。体調改善もあり、8月26日最終日の下部ツアー・山陰ご縁むす美レディースでプロ初優勝。その勢いで突っ走った。

日本の賞金女王、米ツアー挑戦、海外メジャー制覇…。若手にありがちな「将来の夢」を聞かれて「え~? …考えてないです」と首を傾げた。

「ゴルフをやめようと思ったことは?」と尋ねられると「あります!」と即答。「小学生の時、球ばっかり打ってるのに飽きちゃって」と笑う。

飾らない未完成で、等身大の19歳が一瞬で日本No.1女子プロゴルファーの座を射止めてしまった。【加藤裕一】

<川崎春花>

▼生まれ 2003年(平15)5月1日、京都市生まれ。父太郎さん(55)方の祖父が他界前「春の花がいいんじゃないか」と言い残し、春花に。

▼ゴルフのきっかけ 父、母雅子さん(53)姉風花さん(22)と一緒にゴルフ場に行き、カートでゲームばかりしていたが、7歳からゴルフを始める。

▼手ほどきはレジェンド 最初に習ったのは、ツアー通算29勝の吉川なよ子。

▼キャリア 大阪学院大高で「本当にプロになりたいと思うようになった」。20年の全国高校選手権・団体戦、21年の同・個人戦、関西ジュニア優勝。

▼ツアー実績 ジュニアで出場11戦。最高は昨年の日本女子オープン11位、予選落ち4回。

▼得意クラブ 8番~PWのショートアイアン。

▼ドライバー平均飛距離 240~250ヤード。

▼使用クラブ 1Wからウッド系5本はテーラーメイド、アイアンはミズノ、ウエッジはキャロウェイ、パターはオデッセイ。

▼憧れのプロ 稲見萌寧。「練習ラウンドをご一緒させてもらい、ストイックさを感じた。ミスがミスにならず、バーディーをとる。本当の強さがすごい」。

▼趣味はウソ 公には「音楽鑑賞」としているが、実は違う。本当は「おいしいものを食べること。でも、それじゃアホっぽいんで」。会見で食べたいものを聞かれて「母のおみそ汁」。また京都料理では「冬は鶏卵うどんがおいしい」。

▼サイズ 158センチ、51キロ。

 

○…2打差の2位で出た森田は4バーディー、1ボギー、1ダブルボギーの71で、5打差の4位で終わった。「今日も比較的パッティングが決まっていなかったので、3つ、4ついけていれば…」。17番パー4で痛恨のダブルボギー。完全にV争いから脱落した。「痛かったですが、4日間で唯一のミスでしょうがない。しょうがないと思うしかない。ベストは尽くせたかなと思います」。