QT(クオリファイング・トーナメント)ランキング181位、主催者推薦で出場した山内日菜子(26=ライク)が地元・宮崎で初優勝を飾った。

1打差2位から出て、4バーディー、2ボギーの70にまとめて通算10アンダーの206。推薦出場からの「下克上V」は、98年カトキチクイーンズの上田珠代以来、史上4人目。優勝賞金1800万円を獲得した。1打差の2位に比嘉真美子、首位で出た川崎春花は2打差の3位だった。

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どんよりとした雲が空を覆う中でも、燦々(さんさん)と輝く宮崎の太陽のようなオレンジのウエアが映えた。山内は最終18番、30センチのパーパットを沈めた。「心の底からうれしい。本当にギャラリーの人たちの応援に助けられた」。大会中も車で通った、自宅から約20分の超地元会場。地元応援団からの温かい拍手に包まれ、歓喜と感謝の涙があふれた。

首位と1打差で迎えた最終日の最終組で、実績のある比嘉と川崎との競り合い。2番パー3、3番パー4と連続ボギーを喫した。持ちこたえることができたのは、小学3年のときから数え切れないほどプレーしてきた場所だから。「コースのことを知っているから、バーディーを取れるホールはまだまだあると思えた。トップと差がついたことで、逆に落ち着けた」。

「右ラフからアプローチで狙いやすい」6番パー4、作戦通りに10ヤードのチップインバーディーを決めた。じわじわとトップとの差を詰めた。終盤に差し掛かるにつれ、優勝争いの緊迫感が高まる。

16番パー3を迎える時に極度の緊張に包まれた。そこで頭をよぎったのが、日本代表「侍ジャパン」が優勝したWBC。多くの選手たちがガムをかんでプレーしていたことを思い出し、「口を動かすのはいいんだろうなと思った」。栄養補充のおにぎりを頬張ると「口に入れたままティーショットを打った」。“もぐもぐショット”でチャンスを作り、このホールでの逆転バーディーへとつなげた。

QTランキングは181位。昨秋のQTで練習クラブをカートに積んでいたことからペナルティーを受けたことも響いた。今回は主催者推薦で出場。地の利を生かし、25年ぶりとなる「下克上」を達成した。

この勝利で翌週以降のツアー出場権を獲得した。加えて11月最終週に宮崎CCで行われる最終戦、選ばれし40人しか出場できない国内メジャー、ツアー選手権リコー杯への出場も決めた。「ここで勝てたことは本当に自信になった。2勝目、3勝目を挙げられるようにしたい」。新たなスマイル・シンデレラとなった「ひなこ」は、さらなる高みを目指す。【奥岡幹浩】

◆山内日菜子(やまうち・ひなこ)1996年(平8)4月22日、宮崎県生まれ。山梨学院大中退。9歳からゴルフを始める。16年7月にプロテスト合格。17年に下部ステップアップツアーの「ハナサカ・レディース・ヤンマー・トーナメント」優勝。スポーツ歴は水泳、趣味は映画観賞。162センチ、60キロ。

◆QT(クオリファイング・トーナメント=予選会) 賞金シード権を持たない選手に翌年度のツアー優先出場順位を決める大会。昨年は11月下旬から2週連続で実施。第1、ファイナルの2ステージが行われ、QTの35位ぐらいまでが前半戦の出場権を得られる。シーズン途中に非シード選手のランキングは2度並び替えられ、今年は6月と9月に「リランキング」が予定される。