<男子ゴルフ・長嶋茂雄招待セガサミー・カップ>◇最終日◇6日◇北海道・ザ・ノースカントリーGC(7050ヤード、パー71)◇賞金総額2億円(優勝4000万円)

 石川遼(22=CASIO)が、約1年8カ月ぶりの国内ツアー11勝目を挙げた。3位から出て通算10アンダー274で小田孔明(35)に追いつき、プレーオフ3ホール目で突き放した。6月に米ツアーで初優勝した松山英樹(22)に追いつくべく、米ツアー転戦を一時中断して約3週間の合宿を組んだ。テーマとする「世界クラスのショット」が勝負どころで出て接戦をものにした。主戦場の米ツアーの優勝に向けて、同い年のライバルを猛追する第1歩となる1勝だ。

 世界クラスのショットを、最後まで打ち切った。18番パー5で行われたプレーオフ。石川は3ホールとも、ほぼイメージ通りのドライバーショットからバーディーを奪った。

 石川

 3回ともとてもいいスイングだった。正規の18番では重圧もあって、ひどいスイングで右のラフに入れた。あまりに悔しくて、何としてもプレーオフに持ち込んで、同じ重圧の中でいいスイングをしたいと思っていた。

 2・5メートルの優勝パットを沈めると、両手を上げて喜びを爆発させた。優勝と同じくらい、重圧の中で納得のショットを打ち続けられたことがうれしかった。

 史上最年少の21歳で国内通算10勝に到達し、翌年から米ツアーに本格参戦。2年目の今季は、1年目より格段にアップしたショット力を武器に、トップ10が3回と躍進し、早々に来季シードを確定させた。しかし5月以降、本来のスイングを見失った。一方で左手首痛でスランプに陥っていたライバル松山が、ケガの完治とともに復調し、6月のメモリアル・トーナメントで初優勝。先を越された。

 石川

 あれで気づかされました。英樹と違い、自分は目先の結果に追われてばかりで、小手先の調整を繰り返していた。ドライバーの飛距離とかパーオン率とか、米ツアーでも上位につけていたけど、世界に通用する球は打ててなかった。

 6月のトラベラーズ選手権を最後に、思い切って米ツアー転戦を中断した。そして北海道内で、同世代の選手とともにシーズン中では異例の約3週間の合宿を開始。1日8時間の練習で「世界に通用するショット、パット」を追い求めた。

 今大会はその成果を試す、貴重な機会だった。「コースはどこであれ、思い通りの球筋だったか、思い通りのところに落とせたかは分かる。今日は何度も世界に通用すると思えるショットが打てた」。最難関の13番パー4では、残り170ヤードの第2打をピン右手前20センチにピタリ。合宿にも帯同する佐藤賢和キャディーを「グリーンの狭い方にあのショット。間違いなく世界クラス」とうならせた。

 優勝インタビューで石川は「これを世界に通用するゴルフのスタートにしたい。英樹に追いつき、追い越せるように。米ツアーでも優勝します」と話し、大会史上最多7991人の観衆を沸かせた。

 そして優勝の余韻を味わう間もなく「じゃ、練習行きます」と合宿を張るゴルフ場へと直行。午後7時過ぎまで球を打ち続けた。【塩畑大輔】

 ◆松山の米ツアー初優勝時の石川

 6月1日のメモリアル・トーナメント(米オハイオ州ミュアフィールドビレッジGC)最終日、石川は松山と14打差の57位に終わり「英樹が勝った、日本人が勝ったうれしさはありますけど、悔しい」とコメント。翌2日は全米オープン最終予選(同州ブルックサイドGC)に挑んだが、出場権を獲得できず「いかに練習でやってきたことをコースでできるか、向上心をもってやれるか、英樹から無言で教わった気がします」と話した。