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早大中竹監督初の「荒ぶる」/ラグビー
- 2年ぶりに大学日本一を奪還した早大フィフティーンは勝利の雄たけびを上げる
<ラグビー:全国大学選手権>◇12日◇決勝◇国立
人一倍の努力と苦労を重ねてきた早大の中竹竜二監督(34)が、初めて「荒ぶる」をつかみ取った。清宮克幸前監督(40)からバトンを引き継いで2年目。自身も97年に主将としてチームを率いながらも、決勝で無念の涙をのんだ。それから11年、選手として達成できなかった大学日本一の夢を、いくつもの「回り道」を通りながら、監督という立場で実現した。
冷たい雨が降る中、中竹監督が3度、宙に舞った。「こんなに気持ちいいことはない。選手たちに感謝します」。紺色のブレザーが汚れるのもいとわず、戦い終えた泥だらけの選手たちと何度も抱き合った。
華々しい活躍で脚光を浴びた清宮前監督とは対照的に、長い道のりの果てにつかんだ栄冠だった。主将時の97年選手権決勝には、明大重戦車FWの前に屈辱の認定トライを喫して22-32で敗戦。就任1年目で絶対の優勝候補筆頭に挙げられた昨年も、関東学院大の激しいブレークダウンの前に26-33と涙をのんだ。
一般入試に失敗して1度は福岡大に入学。1年後に合格し、早大ラグビー部の門をたたいた。「足は遅い方」で、ひたすら走らされ続ける新人練習では、名簿から名前を消されかけたこともある。向こう見ずなほどの激しいタックルが持ち味のフランカーで、それが災いして両肩をたびたび脱臼。3年終了時まで1度も「赤黒ジャージー」に袖を通すことはなかった。
そんな紆余(うよ)曲折が「試合に出られない選手の気持ちも分かる」と、異例の公式戦出場ゼロで主将に抜てきされた。就任後もけがが絶えなかったが、常にチームを気遣い、氷で患部を冷やしながら飲み会などに参加した。顔面を負傷して自慢の太いまゆをそって患部を縫った時には、薬局へ直行。女性が化粧に使う「まゆずみ」を購入し、まゆを描いて飲み会に出席したこともあった。
そんな部内の和を尊重する人柄にひかれ、今季は大学の同期5人が首脳陣入りした。強烈なリーダーシップを発揮した「信長型」の清宮前監督とは異なり、和をもって貴しとなす「家康型」でつかみとった初めての大学日本一だった。
遠回りした分「こんなにうれしい日は人生でなかった」と中竹監督。選手時代に歌えなかった「荒ぶる」を、静かに目を閉じて熱唱した。【山田大介】
[2008年1月13日9時11分 紙面から]
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