ラグビー用具に焦点を当てる第2回は「ジャージー編」。大会ごとに新調されるジャージーは毎回改良を重ね、選手のパフォーマンスを支えている。素材、形状、デザインなどあらゆるテクノロジーが駆使されている。

      ◇       ◇

ラグビーのジャージーは、その競技特性を徹底的に研究して作られている。相手につかまえられにくくする一方、スクラムなどで力を発揮するには、味方同士がジャージーをつかみ合って固く密着しなくてはいけない。耐久性が求められるが、重くては動けない。99年大会から日本代表に提供しているカンタベリー社の石塚正行氏は「耐久性と軽量性の両立は永遠のテーマ」と指摘する。

1大会ごとに、ジャージーは進化してきた。

▽シルエット 99年大会は袖も胴回りもゆったりしていたが、年々フィット感が増してきた。11年大会では体に密着し、ついに1人で脱ぐことができなくなった。

▽素材 初期の頃にウールだった生地は、綿100%に変わった。70年代後半にカンタベリー社がニュージーランドで綿とポリエステルのブレンドを開発し、オールブラックスが使用。一気に世界中に広まった。

前回大会時には、体の動きに合わせて4種類の素材が使われた。石塚氏は「相手がつかみにくい肩の部分と、滑り止めがあってノックオンがしにくくなる身頃(胴体)の部分とを組み合わせた」と説明する。肩には滑り止め効果がある特殊な糸で作られた生地を使用。日本代表のストッキングにも使われ、プールサイドで走っても転ばないほどの素材だ。脇には伸びる素材、腕にはつかまれにくくするためにストレッチの強い素材を使用。身頃の部分は程よく伸び縮みし、つかまえても指が入りにくい。

▽デザイン 赤白の色は一貫しているが、デザインは毎回異なる。15年大会でエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチが「日本流」を提唱していたため、赤白のボーダーを曲線にし、日の丸をイメージした。前は谷型にして大きく見えるように、後ろは山型でスピード感や躍動感を出した。

▽着心地 フロントローの選手のジャージーには、布をつまんで縫う「ダーツ」を特別に入れ、厚い胸板をカバーした。石塚氏は「汗でぬれるとさらに滑りにくくなって、スクラムを固めることもでき、好評でした」と話す。

今年の日本大会で着用するジャージーはまだ発表されていない。すでに6回ほど選手にモニタリングのテストを行い、改良を重ねた。研究に携わってきた鴛淵文哉氏は「ジャージーは破れたらダメだという思いがある。人間の手で引っ張ったぐらいでは破れない」と話す。細かい内容は明かせないと言う石塚氏も「3年前からリサーチして、さらにいいものを作った」と自信をのぞかせた。

耐久性と軽量化を両立させたジャージーは、まもなく発表される。【松熊洋介】