日本代表が本番に向けて準備を進める中、読者から「相手の分析はどこまでやるのか。ワールドカップ(W杯)で対戦する4カ国の分析は?」という質問が届いた。「教えて、沢木さん!」第3弾は「分析」について。前回大会の経験をもとに、W杯に向けた準備の裏側も教えてくれた。

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相手のデータを細かく分析し、どれだけシンプルに選手にフィードバックできるか。これが、いいコーチだと思う。細かいデータを出すのは、結構簡単。出そうと思えば、いくらでも出てくる。いかにそれを落とし込むか。それが難しい。そこに勝つコーチと勝てないコーチの差がある。

僕は、かなりやる。週末に試合がある場合は、前の週の木曜日までにゲームプランを決める。だいたい10日前。それに間に合うようにデータを集め、分析をする。いつも同時進行。サントリーでは土曜日の試合が終わった夜に、次の試合のゲームプランをリーダー陣に送っている。次の週のスタートから週末に向けての準備をするために。

だから、試合間隔は重要になる。前回大会は中3日があった。今回ないのは、大きなアドバンテージ。中3日は本当にきつい。コンディションもそうだが、戦術的にも時間がない。

1次リーグで対戦する4チームのデータは、ある程度集まっていると思う。僕で持っているぐらいだから(笑い)。そこから導き出したゲームプランを、どこで試すのか。または、どこまで隠すかが大事になる。

4年前、エディーHCはW杯直前の試合では、すべて隠した。W杯の南アフリカ戦、スコットランド戦ではやらない戦術で戦っていた。どこまで隠すかはコーチの考え方次第だが、ゲームプランができていないと隠すこともできない。

今年の6カ国対抗でも、アイルランドやイングランドなど、出しているところと隠しているところが明らかに見えた。ウェールズは普通に勝ちにきて全勝優勝したけれど、これから直前の試合でどうするか。

15年は直前のジョージア戦も「この試合限定のサイン」で戦った。W杯では使わないもの。終了間際のトライで逆転勝ちしムードよくW杯を迎えたが、負けてもショックはなかったと思う。それも戦略。もし、すべてを出して負けたら、自信がなくなるだろう。

今回は直前の9月に南アフリカ戦がある。本気のメンバーでいきながら、違う戦い方をしたほうがいいと思う。メンバーをどう起用するかも、HCの考え方。情報戦なんか関係ないと思う人もいると思うが、間違いなく情報戦。見たら相手も準備ができる。隠せば、できない。情報戦も含めてW杯は特別。