スタジアムには早めの来場を-。ワールドカップ(W杯)開幕まで3週間を切り、大会組織委員会は観戦者へ呼びかける。大会準備も大詰め、国内12会場は観客に対してもスムーズな運営を目指す。これまでの大学やトップリーグのラグビー観戦とは違う「特別な大会」。来年の東京オリンピック(五輪)、さらに20年以降の「レガシー」となるように、観戦者対応への準備も本格化する。

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「90分前までにはスタジアムに」。大会組織委員会は、観戦者に呼びかける。先月まで行われたパシフィック・ネーションズカップ(PNC)では、W杯に向けた「予行演習」が行われた。通常の国内大会と違うのは入場ゲートでのセキュリティーチェックだ。

「長い場合だと、60分お待ちいただくこともある」と組織委は話す。到着がギリギリだと、待っている間にキックオフされる可能性もある。PNCでは「問題はなかった」が、多くの観客を見込むW杯本番では何があるか分からない。

スムーズな入場のため、組織委は持ち物にも注意を促す。「危険物はもちろんですが、飲食物も持ち込めません」。入場前に弁当や飲み物を買っても、持ち込めない。通常の観戦とは大きく違う。さらに、長傘もアウト。制限は多い。

「荷物は少なく、持ち込み禁止を守っていただければ、チェックの時間は短縮できる」と、組織委は観客への理解を求める。飲食物はスタジアム内の売店で購入することになる。

ただし、ここにも問題があった。PNCでは売店に長蛇の列。買えたころには試合が始まっていたという声もあった。何の列か分からずに並び、結局目当てのものを購入できないというケースもあった。組織委は「何の列かが分かるように表示するなど、対策をしたい」。テスト大会で出た課題は解決を目指すという。

チームや選手は、W杯を理解している。大会側は配慮し、チーム側も準備をする。問題は観客。普段から観戦するファンも、国内大会との違いに戸惑うことがあるはず。ましてや、W杯で初めてラグビーを見る人も多い。海外からも多く訪れる。観戦者のマナー喚起や意識改革は、大会成功のために必須な要素だ。

W杯での経験は、来年の東京五輪・パラリンピックにも直結する。両組織委員会は提携を結び、現場レベルでの情報交換も行っている。「19年W杯から20年東京大会へ」という言葉も使われる。「ラグビーW杯の成功が、20年大会につながる」と、東京大会組織委員会の森喜朗会長は話す。

中でも、観戦者の意識が変わることは大きい。東京大会組織委員会は暑さ対策に取り組んでいる。中でも入場ゲートをスムーズに通すことは最重要課題。W杯で「早めの行動」「荷物の削減」ができれば、来年につながる。観戦者のマナーや意識は重要。これが、将来のスポーツ観戦のための「レガシー」になる。

6日に行われるW杯前最後の日本代表戦(対南アフリカ、熊谷)も、本番のテスト。今回は熱中症対策としてW杯では禁止のペットボトル持ち込みもOKになる(詳細は日本ラグビー協会HPで)。組織委ではID登録をしたチケット購入者向けのメッセージや観戦ガイドツイッターなどSNSを使って観戦者への情報提供、協力の呼びかけを行っている。いよいよ迫ったW杯開幕。準備の締めくくりは、観戦者への対応だ。【荻島弘一】