日本-南アフリカ戦が6日夜、埼玉県熊谷市で行われる。会場の県営熊谷ラグビー場は、もう1つの「大勝負」に挑む。昨年4月にワールドカップ(W杯)開催12会場で唯一の新型天然芝「ティフグランド」を導入した。試合の勝敗を左右するスクラムなどにも影響するため、W杯本番を前に大会関係者は目を光らせている。

ティフグランドが導入された県営熊谷ラグビー場
ティフグランドが導入された県営熊谷ラグビー場

絶対に失敗が許されない戦いが始まる。熊谷ラグビー場は約124億円かけた改修工事で、天然芝も全面リニューアルした。国内会場で初となる新品種「ティフグランド」を導入し、ピッチの最終調整も続く。埼玉県公園スタジアム課の榎本恒彦氏(51)は「日本代表には最高のピッチで大暴れしてもらいたい。4年前の感動を次は熊谷で再現してほしい」と大金星を期待した。

ティフグランドは米ジョージア大が開発。従来の天然芝に比べて日陰に強く、6割程度の光で生育する。緑色の期間が長く耐久性もあり、回復も速いのが特徴だ。14年サッカーW杯ブラジル大会の会場だったベイラ・リオスタジアムなどでも使用され「ベストピッチ賞」を受賞した。芝の生産、販売を手掛けるチュウブ(本社・東京都中央区)が17年に県に提案。ラグビーにおいて芝は重要な要素で、同7月にパナソニックと立正大によるスクラム実験を実施した。「根の強度が高くて芝がめくれない」「スパイクにしっかりと絡む」など高評価を得て、採用が決定した。

約2万4000人収容の熊谷ラグビー場は昨年10月、こけら落としでトップリーグ(TL)の試合を開催。その後もTLや高校の試合で使用したが、代表戦は02年のトンガ戦以来となる。今回は15年W杯で歴史的勝利を挙げた南アフリカ戦で注目度も高く、チケットはすでに完売。県や市の担当者は過去に2万人規模の運営経験がなく、緊張感が漂う。

芝を管理する県の男性担当者は毎日約3時間、ミリ単位で葉先を刈り込む。神経と愛情を注いで「激戦に負けないピッチ」を目指している。当日の芝の長さは25~27ミリ。サッカー場の10~20ミリ程度と比べると長く、選手の足への負担が軽減されるという。今年は長梅雨で日照不足にも悩まされた。男性担当者はこう言う。「言い訳はできない。試合後、芝について反応があるようではダメ。選手が気にならないのが一番。南アフリカ戦が成功すれば、本番の3戦も大丈夫。W杯初戦の気持ちで臨む」。

W杯前哨戦となる重要な一戦まで残り1日。毎年、全国高校選抜大会が行われる「東の聖地」が、世界に誇れる最高の環境を整える。【峯岸佑樹】