ワールドカップ(W杯)前最後の実戦となる南アフリカ戦。開幕直前の強豪との一戦で、日本代表が最終確認すべきポイントは何なのか。サントリーで3季監督を務め、15年W杯では、日本代表エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチの参謀役も務めた沢木敬介氏(44)に、ずばり聞いた。

  ◇   ◇   ◇  

「15年の再現」を期待される人は多いだろうが、現時点での力を比較すれば、勝利は簡単ではない。それぐらい今の南アフリカは状態が良い。8月のアルゼンチン戦を見たが、スクラムが相当強く、選手たちから出ているエナジーもすごかった。W杯が行われる日本で、しかも相手が4年前に負けた日本。モチベーションも相当高いだろう。南アフリカにとっては、本番前にチームが結束するための最高の試合と言える。

日本は仮に負けたとしても、下を向く必要は全くない。あくまで、言葉通りの「プレパレーションゲーム」だ。作りあげてきた、今のラグビーのベースの部分が南アフリカ相手にどれだけ通用するか。そこで手応えを得られれば、十分ポジティブな試合と言える。

チームとして確認したいのは3点。1つは、南アフリカが武器とする世界トップクラスのフィジカルにどこまで対抗できるか。2つ目は、セットピース。直前のゲームだけに、隠さないといけない部分もあるが、本番のアイルランド戦を考えても、南アフリカに通用すれば大きな自信になるだろう。最後はフィットネス。強度の高い試合の中でどれだけ走れるか。「走り勝つ」のは日本の根幹の部分。超満員の会場で開幕戦と同じナイター。最高の環境で、本番を想定した最終確認ができるだろう。

数字的には、タックル成功率85%以上、相手を3トライ以内に抑えることが出来れば理想的だ。その2つがクリアできれば、勝ち負けに関係なく、収穫の多いゲームと言える。

けがを考えても、選手起用も難しい試合となるが、「南アフリカに通用する選手=ティア1を相手に戦える選手」であることは間違いない。SO松田力也など、これまでプレー時間が少ない選手が活躍すれば、それ以上の明るい材料はない。(前サントリー監督)