<全国高校野球選手権:高崎健康福祉大高崎8-3山形中央>◇21日◇3回戦

 高崎健康福祉大高崎(群馬)の「上州のゴジラ」、高校通算57本塁打の脇本直人外野手(3年)が、バットで初の8強に導いた。3回に3点適時二塁打を放つなど2安打5打点の活躍で山形中央を下した。1盗塁で大会通算6盗塁として、大会個人最多記録にあと2個に迫った。昨年の前橋育英に続く、群馬県勢の連覇へあと3勝と迫った。

 リンゴを握りつぶしたことがあるという握力91キロの右手で、脇本はバット握りしめる。3回1死満塁。右足を上げないノーステップ打法から、内角低めに入った118キロのスライダーを右翼線に運んだ。「甘いボールが来たら、振り抜こうと思いました」と、表情を変えずに言った。一気に3人が生還し、序盤で試合の主導権を握った。

 2回戦までに5盗塁を決めて、50メートル走6秒1の俊足と走塁技術がクローズアップされた。だが、もともとは高校通算57本塁打のスラッガーとして注目をされていた。8回には2死三塁から、カーブを中前に運び、5打点の荒稼ぎだ。憧れは本家ゴジラの元ヤンキース松井秀喜氏。「打ちにいく時、軸がぶれない」と理想に掲げている。

 持ち前のパワーを生かすためにノーステップ打法に切り替えたのは、今春から。「ボールを呼び込めるので、見極めやすい。タイミングが合わせやすい」。スカウト陣の評価も上がり、ロッテ勢は3試合連続の視察。松本編成統括は「うちの角中タイプ。ノーステップで、あれだけ呼び込んで打てる。強さと速さは高校トップレベル」と評した。

 自慢の走塁では8回2死一塁から、今大会6個目の盗塁を決めた。続く左前打で、三塁コーチの制止を振り切って生還。「本能で生きてますから」と笑わせた。瞬時に状況判断する「野生の勘」で、試合を決めるホームを踏んだ。

 青柳博文監督(43)に「アグレッシブに前へ前へと行こうとする気持ちはうちの野球を象徴している。野球で人生を切り開こうとしている」と言わしめるほど、ハングリー精神が最大の魅力だ。幼少時から祖父母に育てられ、進路はプロ一本。試合で打てなかった日には、悔しくて午前1時過ぎまでバットを振ったことがある。1年時から反省点を書き留めた野球ノートは8冊になった。

 今日22日の準々決勝は、2年前のセンバツ準決勝で敗れた大阪桐蔭と対戦する。脇本は「打倒大阪桐蔭でやってきた」と雪辱に燃える。1回戦前日にチーム全員で行ったお好み焼き店で、一発芸を披露して爆笑を誘った。毎日朝食では、たこ焼きをペロリと平らげて出陣。ご当地の人気チーム相手でも、打って走っての「脇本劇場」で、勝利をたぐり寄せる。【前田祐輔】

 ◆群馬連覇なるか

 昨年の前橋育英に続き群馬県勢の優勝まであと3勝。同じ県で異なる学校の連覇は19年神戸一中→20年関西学院中(兵庫)、70年東海大相模→71年桐蔭学園(神奈川)、74年銚子商→75年習志野(千葉)の3例がある。