<マリナーズ4-1インディアンス>◇18日(日本時間19日)◇セーフコフィールド

 【シアトル(米ワシントン州)=木崎英夫通信員】マリナーズのイチロー外野手(38)が今季1号の特大弾を放った。インディアンス戦の1回、ローから右中間の最深部に放り込んだ。推定飛距離404フィート(約123メートル)のメジャー通算96発目は、3番の打順では初のアーチ。勝負強さと潜在的な長打力に期待して、今季からイチローを3番に据えるウェッジ監督は、打球の質が変わったことを実感していた。

 打った瞬間にホームランとわかる当たりだった。1回裏の第1打席。1ボールからの2球目、通算打率で3割以上と相性のいいローの89マイル(約143キロ)のシンカーを完璧にとらえた。打球は最深部118メートルの右中間フェンスを軽々越え、スタンド中段に着弾。打球の上がり具合や飛距離は、まるでパワーヒッターの1発のようだった。

 イチロー

 先に行かれたから、そりゃもういかんとしゃあないなぁっていう気持ちにはちょっとなったよね。

 刺激を受けていた。今季から自分に代わって1番に座るフィギンズが右翼へ先頭打者アーチ。今季1号アーチで先を越されては、「狙う」しかなかった。

 そのフィギンズが振り返る。「俺の方が飛んだ、とイチローに言われたよ」。フィギンズの飛距離は推定395フィート(約120メートル)。わずか3メートルの差だが、譲れない「プライド」があったのか?

 イチローは「そういう話作るの好きやなぁ(笑い)。アメリカ人っぽいよね、そういうとこ」と否定したので、真偽は定かでない。

 いずれにしろ、文句なしの当たりだった。今季から打撃スタイルを変え、より遠く、より強い打球を打とうとしている試みが特大1号となって表れた。打球の質が変わってきたことを実感しているのがウェッジ監督だ。3試合連続となる打点を挙げた1発を「しっかりとボールを待って振り切った」と指摘。第3、4打席の右方向への大飛球とライナーを含めて「打球にバックスピンがかかっている」と分析した。

 2年前の6月14日、敵地でのカージナルス戦でもこの日と同じように右翼席中段に特大弾を放ったことがある。しかし、この時のイチローは「ドライブがかかっているから伸びてないでしょ」と苦笑していた。一般的には、ボールの中心をたたくとドライブがかかりやすくなり、ボールの中心から下の部分をたたくとバックスピンがかかると言われる。いわゆるホームランバッターの打球には、バックスピンがかかることが多い。同じ特大弾でも、打球の質が違うのは明らかだ。

 もっとも、イチローがその手応えを言葉にすることはない。

 イチロー

 そんな細かいこと考えてないよ。日々そうなればそうなりたいと思っているし、それを重ねていくっていうことですから。そのスタンスは変わらないですね。

 もちろん、ここが終着点ではない。ただ、イチローが新たな領域に足を踏み入れつつあることは確かだ。