<レンジャーズ2-0ヤンキース>◇24日(日本時間25日)◇レンジャーズボールパーク

 レンジャーズ・ダルビッシュ有投手(25)が本領発揮の快投で、名門ヤンキースを粉砕した。完封こそ逃したがメジャー最長の8回1/3を7安打無失点に抑え、移籍後初の2ケタとなる10三振をスター軍団から奪った。渡米後の最速97マイル(約156キロ)をマークするなどのパワー、多彩な変化球を交えた技術で圧倒。ア・リーグ最多タイ3勝目を挙げ、トップギアに入ってきた。

 1人の世界に入った。日本へとスリップした。プレーボール直前。ダルビッシュはグラブで両足をタッチし、テキサスの空に右腕を突き上げた。日本ハム時代と同じルーティンを、初めて米国で敢行した。1試合、無事に投げきることができるように肉体へお願いをする儀式。ジーター、ロドリゲス、そして黒田。なじみ深いビッグネームとの勝負を前に、原点回帰へのスイッチを刺激した。「どういう試合でもチームが勝てば、うれしいというのは一緒。今日もその1つの仕事をこなせたということ」とクールに振り返った。

 最大のピンチは、薄氷の1点リードの3回だった。ジーターの意表を突くバント安打などで、迎えた無死満塁。左巧打者のグランダーソンを三振に切り、迎えたのはロドリゲス。ア・リーグ本塁打王5度の強打者に、直球系のツーシーム連投で力勝負を挑み「三ゴロ併殺を打たせようと思って、そうなって良かった」という狙い通りの結果で勢いに乗った。

 大きな存在にも引っ張られた。相手先発は黒田。序盤から投手戦を展開した。「すごくいい投球をされているので、すごいなと思った。ただ僕は投げている時は言われている通り、打者に対してしか考えていなかった」。5回2死からジーターを1ボール2ストライクと追い込み、メジャー最速97マイル、約156キロは外角低めに外れた。結局、6球目のカーブを左翼線に運ばれる二塁打を許した。結果は負けても、日本と同じように自分自身を測ることができる物差しだった。

 適応は、もう間近だ。ジーター、ロドリゲスからそれぞれ1つずつを含む、計10三振を奪った。4打席凡退したロドリゲスは報道陣に対応することなくクラブハウスを後にしてしまった。「投げ切るというよりも、監督がここで終わりというところまでは、きっちり投げようとは思っていた」。完封まであとアウト2つで降板したが、4万7000人の観衆からはスタンディングオベーションが起きた。「たたえてくれてうれしかった」と、笑顔をのぞかせた。

 早くもリーグトップタイの3勝目。投法も日本時代の主流と同じセットポジションへ戻した。球威、キレ、精度も最高の状態に近づいた。キャンプ地が近かったドジャースのヒルマン・ベンチコーチ(元日本ハム監督)から食事の誘いを受けていたが、実現しなかった。環境になじむため、自分の時間を大切にし、静養に充ててきた。本能が目覚め、新たなスタートラインに立つ。【高山通史、四竈衛】