執念の継投を見せた。楽天が、西武に惜敗した。本拠地開幕戦ということもあり、球場にはコボスタ宮城史上最多の2万6267人のファンが来場。何としても勝利を届けるために楽天大久保博元監督(48)は7回から好投を続けていた先発塩見を交代。中継ぎ陣が打たれ逆転を許したが、クルーズ、守護神松井裕を投入し、仙台のファンに最後まであきらめない姿を見せた。

 7回、大久保監督は勝負に出た。6回4安打1失点、わずか91球しか投げていない塩見を思いきって代えた。勝利の方程式につなぐという強い意志。「とにかく今日は勝ちに行く。何としても勝ちたかった」と青山をマウンドへ送り込んだ。絶対的なリリーバーを投入し、あとはクルーズ、松井裕とつなぐ。1点差を逃げ切って、本拠地開幕戦を白星で飾るはずだった。

 だが、勝負の流れはマイナスの方向に傾いた。青山がポンポンと2死を取る。しかし、西武金子侑に中前打を打たれると、続く秋山へ四球。潮目が変わった。ここで再び大久保監督が動いた。マウンドへ自ら向かうと、球場がどよめいた。

 「代えるの?」「マジか!」。超満員のファンが叫ぶ。左の好打者栗山へ送り込んだのは西宮。だがストレートの四球を与え、2死満塁としてしまう。流れを止めるべく、再びマウンドへ向かう。また、球場をどよめきが包んだ。

 願いを込めて送り出された4番手の福山。しかし、迎えた浅村に踏ん張れなかった。フルカウントからの6球目を右翼線へとはじき返された。走者2人が生還し、逆転。福山は「打たれてしまった。あそこでゲームが決まってしまった」と悔しがった。

 それでもあきらめなかった。1点差を追いつくために惜しげもなくリリーフ陣をつぎ込んだ。8回はクルーズ。そして9回、守護神松井裕の名前が呼ばれると球場に歓声が響き渡った。「ホーム開幕戦で、球団を挙げて満員にしてくれた。何としても勝ちたかった。今日は特別」と起用理由を説明した。最後までほとんどのファンが席を立たずに声援を送ってくれた。その思いに応えるための一戦必勝継投だった。

 試合は惜しくも敗れた。初の連敗となったが、指揮官は「明日は勝つよ!」と嫌な流れを振り払うかのように、力強く言い、帰路についた。【島根純】