男八木が、おとこ気黒田に投げ勝った。中日が新戦力の活躍で広島黒田に土をつけた。オリックスを戦力外となった八木智哉投手(31)が7回4安打無失点、10奪三振の力投で、12年7月26日以来、982日ぶりの白星を挙げた。昨季までソフトバンクの育成選手だった亀沢恭平内野手(26)も適時打で活躍。開幕3連敗後の5連勝で一気に同率首位となった。

 ウイニングボールを大事そうにポケットに入れた八木は、こみ上げるものを抑えた。

 「いろんな気持ちがありますけど、大好きな野球ができている。今日は楽しんでいこうと思いました…。素直にうれしい。1回死んで、こういう舞台で野球ができていることに感謝です」

 吹っ切れた今季2度目の登板。どん底を知る背番号58が、球界でもっとも注目される男に投げ勝った。

 持ち味を発揮した。120キロ台後半のシンカーに、110キロ台後半のスライダー。キレのある変化球を低めに集める。これぞ八木の投球だ。4回には先頭で内野安打を浴びた菊池を「絶対にスタート切ってくると思った」と、冷静につり出してけん制アウト。7回には2死から小窪を2ストライクまで追い込み、外角シンカーで空振り。10個目の三振を奪った。

 06年パ・リーグ新人王に輝き、年俸も一時は6000万円まで上がった。昨季オリックスから戦力外通告を受け、トライアウトを経て中日入り。年俸1200万円からの再出発だ。東京に夫人と5人の子どもを残して名古屋市内で単身赴任。自宅で料理を作ることもある。すっかりチームになじんだ左腕はお立ち台で名古屋のファンは? と聞かれ「最高で~す!」と絶叫した。

 谷繁兼任監督は八木の誠実な姿勢をたたえた。「いい角度で、いい高さだった。ただ、今日だけじゃない。昨秋から必死に野球に取り組む姿を見てきた。何とか頑張って欲しいと思っていた」。阪神との開幕3連戦はまさかの全敗。だが、そこから巨人、広島には堂々のカード勝ち越しを決めた。大型補強はなくても、渋い仕事人が仲間に加わった。【桝井聡】