意地の高木勇撃ちや。阪神福留孝介外野手(38)が、巨人高木勇からチームが奪った3点すべてにからんだ。2回に先制の口火を切る二塁打。3回には犠飛で、5回には右翼線へのタイムリーで打点を挙げた。敵地巨人戦で連敗を喫する中、打線のキーマンは元気だ。さあ、今日4日から本拠地甲子園での中日3連戦。虎よ、立ち直ってくれ-。

 その姿はまさに仕事人・福留だった。敗色濃厚となる終盤まで、1度も失敗することなくミッションをこなした。マウンド上の高木勇とは過去2度の対戦で4打数無安打。そんな右腕がまさかの展開に顔を引きつらせていた。

 「そういう(3度目)意味ではタイミングを取れて、というところはある」

 福留の意地に東京ドーム左翼席の虎党がうなった。1点を追う5回2死一、二塁。高木勇が武器とするシュートの小さな変化をバットで合わせた。うまくボールを乗せると振り切った勢いで右翼長野の右にライナーが弾んだ。逃げる巨人の背中を捕まえた同点の適時打に「勝ち越された直後のイニングでしたし、ランナーをかえすバッティングができて良かったです」。鮮やかな、この日3つめの仕事だった。

 「その打席、その打席でやれることをしっかりやっていけばいいんじゃないかな」

 派手な一振りの前には序章があった。2回の先頭では右翼フェンス直撃の二塁打で出塁し、先制点をお膳立て。日米通算400二塁打の勲章も添えられた。今度は追加点が欲しい1点リードの3回1死満塁。フルカウントに持ち込み、中堅への犠飛で2点目をもたらした。「なんとか最低限の仕事はできたと思います」。切り込み役、加速役、巻き返し役。チームに必要な仕事はすべて福留がやり切った。

 2連敗と散々だった東京遠征。それでも自身は2試合連続安打と5番の仕事を果たした。遠征前、「たまたまそうなっているだけだよ」と笑ったデーゲーム男ぶりにはさらに磨きがかかった。35打数12安打で打率3割4分3厘(ナイターは2割2分2厘)。ゴールデンウイークも折り返しに入る今日4日からは甲子園に中日を迎える。3連戦はもちろんデーゲームだ。たくさんの子どもの前で欲しいのは勝利のみ。虎の窮地は5番が救う。【松本航】