5点リードで楽勝のはずが…。阪神がまさかの逆転負けで連勝ストップ。首位DeNAの勢いにはじき返された。交流戦の借金突入も確定する敗戦だったが、光明は鳥谷敬内野手(33)の復調ムード。2回の2号2ランなど猛打賞の活躍。逆襲にかかせないキャプテンのバットに当たりが戻ってきた。

 鳥谷は外角146キロ直球に手首を返した後、一瞬だけ打球の行方を見守った。センター後方にある巨大な電光掲示板の上、ちぎれんばかりに旗が揺れていた。左翼から右翼に吹く強風の後押しもあり、飛球は切れることなく左翼ポール際の最前列席に見事収まった。一塁ベンチ前に戻ると、福留と言葉を交わしながら思わず照れ笑いした。

 「風が助けてくれました」

 2点リードの2回1死二塁、1ボール1ストライク。アップアップの右腕山口に強烈パンチを食らわした。4月12日広島戦(甲子園)以来、実に40日ぶりの1発となる2号2ランだ。4回には詰まりながらも中前に落とし、8回はたたきつけて二塁内野安打を記録。14年9月24日DeNA戦(横浜)以来で今季初となる猛打賞を決めた。

 「ラッキーなヒットだったんですけどね。いいところに落ちるというのは、いいこと。悪くはないと思います」

 ゲームは5点リードを逆転され、サヨナラ負け。試合後は険しい表情のままチームバスに乗り込んだが、キャプテンの復調気配は何よりの朗報だ。前日21日巨人戦(甲子園)には8回、14打席ぶり安打が決勝打となっていた。和田監督も「3本打っているし、状態が上がってきていると思う」と上昇気流を感じ取っていた。

 4月には深刻な脇腹痛にも苦しんだ。それでも極端に練習量を減らすことはなく、早出特打、試合後の居残り特打の常連であり続けた。ライナーが正面を突くケースが続いた時期もあった。「野球の神様、いないのかな?」と冗談めかして笑いながらも、黙々と体をいじめ続けた。まだ99試合もある。2割3分7厘の打率はどこまで上昇していくのか。鳥谷の姿勢を知る後輩たちは誰もが、努力は裏切らないはずだと予想している。【佐井陽介】

 ▼阪神鳥谷が2回の2点本塁打で今季12打点目。プロ通算689打点となり、遠井吾郎の688打点を抜いて阪神歴代9位に上がった。8位は桧山進次郎の707打点。7位は田淵幸一の735打点。鳥谷は昨季44試合終了時点が18打点で最終73打点。今季中に7位まで達する可能性は十分。