2日続けてのサヨナラ負けはゴメンだ。1点差の9回に追いつかれて突入した10回。阪神福留孝介外野手(38)が決勝の2点適時打を放った。DeNA安部が四球連発で2死満塁とし、初球を中前へ。9回も一時勝ち越し犠飛と3打点を挙げ、DeNAの本拠地連勝を11で止めた。西岡抹消、呉昇桓が体調不良というチームの窮地を救った。

 西岡がいない。呉昇桓もいない。苦しいチーム事情で粘ってきた延長10回だった。福留はいつにも増して集中していた。同点の2死満塁。1球で十分だった。

 「全員が全員いつもいるわけじゃない。いるメンバーでどれだけ頑張れるか。それが今日できましたね」

 初球を振り抜くと、打球は鮮やかに中前へと抜けた。激闘にケリをつける決勝の2点適時打。手のひらを上に向けて差し出した山脇一塁コーチの手を、思いっきり上からたたいた。ガッツポーズも飛び出した。「今日は壮絶な投手戦で能見が頑張っていた。(9回の)守備でも荒木がちょっと(ミス)ありましたけれど、そういうのを全部助けられたので良かったです」。38歳のおとこ気が一振りに詰まっていた。

 チームを支え、支えられる。その「支えられる」部分が好調福留の一因だ。今季の福留には人工芝球場での「個人調整」が用意された。集団で行うウオーミングアップから外れ、向かうのは外野のファウルグラウンド。笛による全体アップではなく、1人黙々と体を温める。その後始まる打撃練習の順番も繰り上がった。打ち終わりは昨年より約20分も早まった。

 「今年は早いめにという配慮をコーチがしてくれている。その後の時間を有効に使うためだし、助かっているよ」。人工芝による体への負担を考慮し、昨年は数試合に1度「休養日」があった。勝利のために最善の方法は何か。福留が毎日先発し、相手に威圧感を与えることだった。伊藤トレーニングコーチは「人工芝の負担は考えてあげないと。年を重ねると準備に時間もかかるだろうしね」と説明する。「福留プロジェクト」は功を奏し、今季は45試合中42試合でスタメン出場。福留自身もその恩をバットで返す毎日だ。

 同点の9回には無死三塁で、一時勝ち越しとなる左犠飛を打ち上げた。前日22日には本塁打を含む猛打賞。2試合で5打点を稼いだ男は言った。「これだけのファンの方に入っていただいているので、明日もしっかりしたゲームをして、勝てるように頑張ります」。交流戦まで残りは1試合。福留フィーバーにはまだまだ、続きがあるはずだ。【松本航】