「日本生命セ・パ交流戦」が26日開幕し、阪神が4年ぶりに白星発進や。先発岩田稔投手(31)が3安打10奪三振での今季4勝目。4年ぶりの完封勝利に、3年ぶりの2桁奪三振。チームもリーグ4位に浮上。マウンドで仁王立ちし、大きな白星を運んできた。

 最後はヒヤヒヤだ。「越えんといてくれ!」。願いが通じ、岩田は苦笑いで夜空にフーッと息を吐いた。3点リードの9回2死一塁、6番後藤の大飛球を中堅大和がフェンス手前でキャッチ。4年ぶりの完封を飾り、グラブをたたいた。

 「懐かしいですね。(完封の味を)忘れてました」

 今季初めて鶴岡とコンビを組み、早いカウントで勝負を続けた。前回19日巨人戦は5回途中6失点。「前に体重が乗りきっていなかった」。冷静にフォームを修正し、スライダー、フォークのキレ味は抜群。被安打3で3年ぶりの2ケタ奪三振、11年10月7日横浜戦以来の完封を決めた。

 「守口出身の後輩相手に恥ずかしい投球はできないと思っていました」

 楽天先発は塩見。大阪・守口市の庭窪中で5学年下にあたる。中学時代は岩田が所属した門真シニアのライバル、守口シニアに在籍していた後輩だ。「地元の友人からも結構、楽しみにしてるでって連絡があったので」。あいさつをかわす程度の仲とはいえ、負けられない投げ合いだった。

 「そういや昔、辰吉さんに怒られたな(笑い)。大スターとの遭遇やったし、今でも鮮明に覚えてるわ」

 守口市出身で現在も守口住まい。小学生時、元WBC世界バンタム級王者辰吉丈一郎に優しく叱られた。ボクシング界のスーパースターも守口市在住。京阪電車、守口市駅の構内で偶然出くわして舞い上がった。「うわっ、辰吉や!」と叫び、「辰吉“さん”やろ?」と突っ込まれたのはいい思い出だ。

 シンガー・ソングライターの絢香は長男が通った幼稚園の大先輩。中学時代に岩田の担任を受け持った恩師が数年後、絢香を指導したという縁もある。

 「守口出身って結構おるんよ。絢香さん以外にもお笑いの中川家さんとか、ますだおかだの増田さんとか…。隣の寝屋川市にはレッドソックスの上原さんがいるし、摂津市にはミランの本田選手がいる。みんな頑張ってるからな」

 まだまだ辰吉“大先輩”には遠く及ばないが、守口が誇るスーパースターの背中を地道に追っている。

 母校関大の大先輩にあたる山口投手コーチが5月15日に65歳誕生日を迎えた。1日遅れで「おめでとうございます」と伝え「遅いわ!」と突っ込まれたが、祝い星にもなった。「守口対決」を制し、チームは4年ぶりの交流戦開幕勝利。「不思議な感覚でした…」。今季4勝目は最高の珍味だった。【佐井陽介】

 ▼岩田の完封勝利は11年10月7日横浜戦(横浜)以来、4シーズンぶり5度目。2桁奪三振は12年7月11日中日戦(甲子園)以来、3シーズンぶり5度目。05年の導入以降、交流戦の初戦で阪神投手が完投、完封勝利とも初となった。なお、阪神投手の完投は今季6度目(他に藤浪4、能見1)で、広島と並び両リーグ最多。

 ◆大阪府守口(もりぐち)市 大阪平野の中心部に位置する。南と西は大阪市に接しており、市内を地下鉄谷町線や京阪本線などが通ることからベッドタウンとして発展。隣接する門真市に本社を置くパナソニックの関連施設も多い。面積12・73平方キロ。人口14万5696人(いずれも13年10月1日現在)。西端勝樹市長。