打線もキーマンが活躍の会心勝利だ。阪神4番マウロ・ゴメス内野手(30)が豪快な4号2ラン。4月19日以来の甲子園アーチをかっとばした。12球団ワーストの打率に苦しむ貧打と、交流戦でオサラバするぞ。

 ゴメスが求めていた切れ味だった。1点リードの5回1死一塁。決着は体から遠い、外角低めフォークだった。打った後のフォロースルーがピタリと決まる。「引っかけずにフォロースルーをとってうまく打てた。だからああいう形でセンター方向にいい打球が伸びてくれたんだ」。納得のスイングで力を伝えた白球は、遠くに見える左中間席に行き着いた。

 「オフは体を絞るから、自分用のメニューを用意しておいてくれ!」

 昨年夏のことだった。打点王へ突っ走っていたゴメスは球団トレーナーに1つのお願いをした。2年目の活躍を見据え母国ドミニカ共和国で過ごす冬場の専用メニューを予約。ところがそれの受け取りを忘れ11月に帰国していた。2月の来日時には周囲から体重増加を指摘された。

 このままではまずい。チームメートにはおなかをつままれ、クラブハウスでは鏡の前で自分の体を見つめた。絞るしかない。ゴメスの減量計画が始まった。その1つがスイメックスと呼ばれる流水プールの利用。甲子園では試合後に自ら意欲的に足を運んだ。トレーナーからは食事の摂取方法でも指導を受け、体重が来日時から5キロ以上も落ちた。今は、自然と引き締まった下腹部をつまみ、ニヤリと笑うことができる。確かに戻ったキレが、7試合ぶりの4号2ランに凝縮されていた。

 「今日に関してはリラックスして低め(のボール球)に手を出さないようにいい形で打てたよ」

 体の準備があれば、後は選球眼だ。この日は1、3回に四球を選んで好機を演出。2打席で初対戦だった塩見の配球をつかんだ。「カウント3-2は変化球が多かったのでそういう頭があったよ」。こうして1発への準備は整えられた。

 「時には結果が出ないこともあるけれど、毎試合毎試合、新たな気持ちでやりたいね」

 毎年苦戦する交流戦。その嫌な流れを止めるべく4番のエンジンがかかった。【松本航】