星野さんが来ているからって、ゼロのニュースで出迎えるなんてやるね。完封勝利、以上の価値ある力投だ。阪神藤浪晋太郎投手(21)がチームでは05年下柳以来となる先発して延長戦まで投げた。4安打、自己最多タイの13奪三振で10個のゼロをズラリ。これで26イニング連続無失点。勝利投手にはなれなかったが、延長激勝の最大の立役者だ。

 131球を投げきっても、まだいけた。藤浪の投じる球は回が進むにつれて加速した。最後まで球速は衰えず、甲子園のスピードガン表示は150キロを超え続けた。

 「後半にいくにつれてしびれる場面で、1点もやれないところで、何とか抑えようと思って力を入れました。体力にも、気持ちにも余裕があった。抑えられて良かったです」

 0-0で突入した延長戦。10回は1死から8番福田に中前打を許した。1点が致命傷になるこの場面。9回まで投げていた上に、また力を入れた。中川への初球、外角への152キロ直球で三ゴロ。「よっしゃー!」。併殺打に仕留めた藤浪は雄たけびを上げた。マウンド上でガッツポーズして跳びはねた。スコアボードに、この日10個目の0を並べた。

 今季初完投勝利を収めた14日ヤクルト戦の3回から、20日巨人戦のプロ初完封勝利をはさみ、これで26イニング連続無失点だ。約1カ月間白星から遠ざかっていた21歳右腕が目覚めた。9回にペーニャ、後藤、嶋と3者連続三振に切るなど、奪った13三振はプロ3度目で最多タイ。10Kを奪った前回巨人戦から2戦連続の2桁奪三振もマークした。

 延長10回を投げたのは初めてのこと。「10イニングは経験ないと思います。そうですね、初めてだと思います」と振り返った。白星には恵まれなかったが、やり切った藤浪の表情は明るかった。中西投手コーチは「ここ3試合、9回完投して何かつかんだんじゃないか」とうなずいた。

 8回もゼロで抑えてベンチに戻ってくると、中西投手コーチが近づいた。「自分で決めるしかないぞ」。藤浪はうなずきながら、打撃用手袋をはめた。先頭で打席に立つと、表情を引き締めた。「1発を狙ってこいと言われましたし、自分も1発を狙っていきました」。フルカウントから外角直球をフルスイング。結果は空振り三振だったが、バットでもチームを導こうと全力だった。

 「何よりチームが勝って良かったです」。勝ちにこだわった藤浪の力投が、勝利へと導いた。【宮崎えり子】

 ▼藤浪が先発し10イニングを無失点。阪神の先発投手が延長回まで投げたのは、05年10月5日横浜戦で下柳剛が10回完投し勝ち投手となって以来。藤浪が完封していれば、阪神では00年4月27日広島戦で藪恵壹が10回を投げ1-0で勝って以来、15年ぶり。前回20日巨人戦から2戦連続完封なら昨季のメッセンジャー以来で、日本人投手では92年野田浩司、湯舟敏郎以来、23年ぶりとなるところだった。

 ▼藤浪はプロ最多タイ13奪三振(過去に14年6月17日日本ハム戦、同7月15日中日戦)。前回巨人戦10奪三振に続き、プロ初の2試合連続2桁奪三振。