西武秋山翔吾外野手(27)がイチロー級のスピードで通過点を突破した。「日本生命セ・パ交流戦」ヤクルト2回戦の初回にセンター前に運び、63試合目で100安打に乗せた。94年のイチロー(オリックス)の60試合、64年の広瀬叔功(南海)の61試合に次ぐ、史上3位のスピード記録となった。今季100本目の安打を口火に1回に4点先制。チームを3年ぶりに交流戦勝ち越しに導いた。

 今季100度目のHランプがともっても、秋山に特別な感慨はなかった。初回。ヤクルト石川の内角高めシュートにバットが体に巻きつく。左肘が最短距離を通り、右肘を外に抜くことでミートポイントを確保し、懐を突いた球をセンター前へはじき返した。63試合での100安打達成はイチロー、広瀬と偉大な先人に次ぐスピード記録。それでも「通過点です」と機先を制し「うれしいこと。でもこれで終わりじゃない。100本打つことや、何本ペースと言われることが目標じゃない。振り返るのは、まだ早い」とブレなかった。

 イチローが史上最速ペースで100安打を駆け抜け、210安打を放った94年。秋山は6歳だった。当時のフィーバーは幼心にも記憶にすり込まれている。「小学生になる前だけど、野球界だけでなく、社会的にもイチローさんの名前が出たのは覚えている。プロになって普通では考えられないことだったのが分かる」。天才に匹敵するペースで安打を量産しているからこそ、すごみを感じる。

 技術的にはグリップを下げ、ヘッドを寝かせた新打法で開眼した。何よりも心の波が少なくなった。「状態が悪くても1本打つことをモチベーションにしている」。無安打に終わり、試合後に室内練習場で打ち込む姿に田辺監督も「秋山は自分に何が必要なのか分かってきた」と目を細める。5月30日の阪神戦でメヒアが同点ソロを放った際には「今日のお立ち台、メヒアも呼んでよかったんじゃないですか? そうしたら本人もさらに乗るんじゃないですか」と広報に逆提案した。自分のヒットだけでなく、仲間に気持ちよくプレーしてもらい、チームの勝利を強く欲している。

 100安打に到達しただけでなく、2回にはマルチ安打で101安打目も刻んだ。「区切りで終わるのではなく、1打席ずつと思っている」。10年の阪神マートンの214本を上回る229本ペース。挑戦は道半ばにある。【広重竜太郎】

 ◆秋山翔吾(あきやま・しょうご)1988年(昭63)4月16日、神奈川県横須賀市生まれ。横浜創学館-八戸大。10年ドラフト3位で西武入団。183センチ、85キロ。右投げ左打ち。

 ▼秋山が2安打を放ち、今季の安打数を101本とした。チーム63試合目で100安打到達は、94年イチロー(オリックス)の60試合、64年広瀬(南海)61試合に次いで史上3番目のスピード記録で、シーズン最多の214安打した10年マートン(阪神)より3試合早く到達した。出場63試合目も94年イチロー60試合、64年広瀬61試合に次ぎ、86年バース(阪神)に並んで3番目に早い(バースはチーム66試合目)。3選手の100安打到達日までの安打別の試合数を比較すると

  安 打  0 1 2 3 4 5

  イチロー 5 21 25 7 2 0

  広 瀬  9 17 25 8 1 1

  秋 山  9 22 18 13 1 0

 秋山は猛打賞が14度と、固め打ちの多さが特長だ。