“西武キラー”の金子を止めたのは“金子キラー”のおかわり君だった。西武中村剛也内野手(31)が2回、真ん中低めのフォークを力と技の結晶で逆方向の右翼席に押し込んだ。日本ハム中田に並び、リーグトップタイの20号も「何とか先制点を取れて良かった。トップタイ? どうでもいいです」と感情の波を表に出さなかった。

 日本最高峰の右腕から通算9本目。通算292本塁打中、日本ハム吉川の8本を抜き、最もお得意さまの投手となった。金子にとっても通算92被本塁打で中村は最も1発を献上した天敵の打者だ。2位中田の3本との大差はキャリアを差し引いても、希代のアーチストとしての価値を高めるものだ。

 中村の1発が、約4年、不沈艦だった金子攻略への大号令となった。粘っこく26人の打者中13人が5球以上を投げさせた。6回にメヒアの3ランでトドメを刺し、122球を要させた。昨季は24回1/3で1点も奪えず、首脳陣の試合前の青写真は「目標3点」だった。田辺監督は「主砲の1発からうまく攻めた」と評した。

 3兄弟のパパとしての貫禄も示した。5歳の長男はそっくりとの評判。野球のプレーぶりを聞かれ「人よりは(打球が)飛ぶんじゃないですか」とDNAを感じ、目を細める。父の日には「そうなんですか? 知らんかった」と無頓着だったが、結婚記念日に毎年のように打つメモリアルデーに強い体質は相変わらずだった。

 9回にも適時二塁打で63打点に伸ばし、2冠に躍り出た。特筆すべき勝利打点も10個目に達し、リーグトップを走る。「チームが勝つことが一番なので」。ホームランと勝利のおかわりを重ねていく。【広重竜太郎】

 ▼中村がリーグトップに並ぶ20号。中村の20本塁打以上は2年連続8度目となったが、西武で20本以上の回数が多い選手は(1)清原11度(2)秋山9度(3)中村8度。西武で8度以上は清原、秋山に次いで3人目だ。また、金子から打った本塁打は通算9本目。吉川(日本ハム)の8本を抜いて投手別の最多本数となり、金子が9本打たれているのも中村しかいない。