最高の船出を飾った。阪神上本博紀内野手が29歳の誕生日に、いきなりの初球先頭打者本塁打をぶち込んだ。初回。左翼スタンドからのバースデーソングをBGMに、DeNA山口の144キロ速球を強振した。

 「とにかく出塁することを意識して、積極的にいこうと思っていました」

 ふわりと上がった打球は、そのまま左翼スタンドへと吸い込まれた。3号ソロに「いい形で先制することができて良かったです」。チームに流れを引き寄せる1発には、いつも以上の価値があった。先発はプロ初先発の2年目山本。上本は「それはいつもと一緒です」と普段通りを強調したが、堂々とした兄貴らしい仕事ぶりだ。

 昨年8月17日DeNA戦。同じ横浜だった。先発はプロ未勝利だったルーキー岩貞。ここでも上本は主導権を引き寄せた。初回初球先頭打者本塁打で後輩を助けると、4安打の固め打ち。岩貞をプロ初勝利に導くと、今回は3安打猛打賞で山本を支えた。

 若手選手はそろって「上本さんは後ろからさりげなく背中を押してくれる」と話す。日常生活はもちろん、ピンチの場面でも二塁からの声かけに後輩は励まされる。そんな人柄がバットにも表れた。

 4連敗中は15打数1安打で打率6分7厘。1日ヤクルト戦は拙守もあり、和田監督に「ちょっと攻守の両方で精彩を欠いている。あれが元気にならんと…」と苦言を呈された。大きな1勝にも「明日も、これからもずっと大事です」と慢心はない。上本は誕生日を分岐点に復調ロードを進む。【松本航】