阪神金本知憲監督(47)がサプライズ紅白戦を敢行した。3日、高知安芸の球場に詰めかけた多くのファンを見るや、4日に予定されていた紅白戦の前倒しを急きょ決断した。試合では“初采配”を振るなど攻守にわたって、超積極的な金本野球の一端を披露。新監督の粋なファンサービスに2500人の虎党は大喜びだった。

 午前9時50分、安芸市営球場にうれしいアナウンスが響き渡った。

 「おはようございます。新監督に就任しました金本知憲です。明日、紅白戦を予定していましたが、たくさんお客さんが来られているので急きょ、きょう、やります」

 すでに多くの人が詰めかけていたが、声の主が金本監督だとわかると、どよめきと歓声が湧き起こった。異例の“マイクパフォーマンス”も含め、休日に駆けつけてくれた虎党へのアニキ流のサービスだった。

 「朝、球場くる時に祝日だということに気付きまして、お客さん、結構たくさんきているなあと思ったんで。実戦もみたいかなと。マイク? ちょっと出しゃばりすぎましたかね(笑い)。わざわざ来てくれるファンのために、少し演出しました」

 平日である4日より、祝日のこの日の方が多くのファンに見てもらえるという配慮だった。ただ、ここから監督、コーチ、スタッフも慌ただしく動きだすことになった。すでに通常の練習メニューが用意されていたが、白紙に戻し、紅白戦用のメニューにつくりなおされた。金本監督は香田投手コーチのもとへ足を運ぶと、予定変更をわびて、登板可能な投手を相談した。その関係で8回制の予定が6回制となった。

 就任後、初の実戦となった紅白戦では自らの色を存分に出した。1回無死二、三塁では打席に向かう今成を呼び止めて、指示を出した。なおも1死三塁の場面ではベンチを出て「当たりゴーで。スタートしっかり!」と指示した。走者の状況、カウントなどケースごとに打者、走者がどういうプレーをすべきか。重盗を仕掛ける場面や、1点差を想定し守備位置変更を指示するなど、自らの目指す野球を浸透させるための第1歩だった。

 「こういうケースはこう、カウントがこうなったからこうという。最初の3回か4回くらい、そういうアドバイスを伝えることができた。これは時間がかかることだと思うんで根気よくやっていきます」

 指揮官は実戦打撃練習ととらえていたようだが“初采配”から見えてきたのは攻守にわたって、超積極的な野球だった。試合終了後にはぎっしり埋まったスタンドから拍手が起こった。状況を見て、最善と判断すれば、変更はためらわない。金本監督の決断力が虎党の休日をハッピーにした。【鈴木忠平】

<金本監督のここまで>

 ◆大砲育成 10月19日の就任会見で「タイガースの伝統として大砲がなかなか出てこない。今で言うなら江越、横田、陽川ですか。そういう振れる選手に期待したい」。

 ◆俺より目立て 同27日、現役時代と同じ背番号6を発表。「目立つかもしれないけど、だれが監督だったっけ? というくらいね。選手が毎日、話題を振りまいて(スポーツ紙の)1面いってくれと。そういう意味も込めての6番」。

 ◆初カミナリ 11月1日、秋季キャンプで返事が小さい田面に「返事!」と怒声。「その日どころか、言うた1時間後にそういうことがある。返事とあいさつは大きくと。小学生じゃないんだから」。

 ◆打席に 2日、歳内の投球練習中、ブルペンで左打席に立つ。フォークに「振らん、振らん!」、直球に「インコース真っすぐ、ホームランや」と打者目線からの厳しい助言を与えた。