<パCSファイナルステージ:ソフトバンク2-5ロッテ>◇第5戦◇18日◇福岡ヤフードーム

 レフトスタンドの片隅、わずかな黒い集団が、ロッテ清田育宏外野手(24)の打球を呼び込んだ。1点差とされた直後の9回2死二塁、左翼に高々と上がった打球は、静まりかえる中を飛び、ロッテファンの元へと届けられた。「7回のチャンスで凡退していたんで、もう1回回ってこいって思っていた。(西岡)剛さんが出てくれてうれしかった」。強い気持ちで打った1発だった。

 開幕快進撃の立役者だった荻野貴が右ひざを負傷し、その代役として1軍に定着。ある日、千葉マリンでの試合前練習に荻野貴の両親が来た。息子はケガでそこにはいなかったが、バッティングケージから出てくる清田を待っていた。「息子の分まで頑張ってね」と言われ握手をかわした。「はい」と力強く返事して、活躍を誓っていた。

 前夜の9回、守備で西岡と激突して右ひざを強打した。患部はテーピングで固め、痛み止めも服用している。それでも気持ちの強さを保てるのは、荻野貴の分もと思っているからかもしれない。先日、CS前に会った時「もうお前より速く走れるぞ」とリハビリに励む俊足の荻野貴が笑わせてくれた。この日の一打は、その冗談への強烈な返礼になった。

 ポストシーズン2発はルーキーでは巨人長嶋、原、仁志に次いで4人目の快挙だ。「スーパースターに並んだ?

 でも、僕だけCSなんで。日本シリーズで打てるように頑張ります」。真の意味で肩を並べるには、あと1つ勝って、次の舞台で打つことが必要だと分かっている。【竹内智信】

 [2010年10月19日9時42分

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