<楽天2-1ヤクルト>◇20日◇Kスタ宮城

 楽天田中将大投手(22)が、ヤクルト由規投手(21)との息詰まるような投手戦を制した。9安打を浴びながら、制球力のある直球を軸に自己最多の15三振を奪い、1失点で完投した。リーグは違えど、長く球界をリードしていくであろう若き両右腕の激突。Kスタ宮城の観衆は、けれん味のない真っ向勝負に酔いしれた。1-1の7回、鉄平外野手(28)が適時二塁打で決勝点をたたき出した。

 屋外球場では国内最大の創造電力ビジョンが「奪三振、球団新記録」と田中に伝えた。自身にとっては「そんなの知らないし…」と大した興味ではなかった。「多く取れたのは良かったのかな」というちょっとした感慨程度で、「もったいない負けが多かったので、勝てたことが何よりだった」。チームにとって最優先事項だった交流戦初勝利にホッとしていた。

 記録は二の次かもしれないが、三振で打線を寸断したことが最大勝因であることも、また事実だった。追い付いてもらった直後の2回。先頭宮本に安打を許すとギアを上げた。7番からを3者三振。勝負球はすべて140キロ台後半の直球で、強引に主導権を引っ張り込んできた。3番ホワイトセルには4度、インローへの変化球を振らせた。5番バレンティンは2三振。関係者いわく「安打を示す打撃チャートが真っ赤」というセ・リーグ屈指の強打者に対し、4回の攻めは申し分がなかった。148キロを懐深く放り込んだ後、147キロの超高速スプリットを、ワンバウンドで外角へ制御。「振ってくる打者でも、いいところに投げれば三振が取れるかな」。絶好調ヤクルト打線の上をいった。

 直球、スライダー、スプリット、ツーシーム。この4種類を駆使し15個三振を奪った。手先が器用で多くの球種を操るが、5年目を迎え持ち球を洗った。失投→痛打のリスクに優先順位をつけ、原点である直球を軸とし、変化球を取捨選択した。シンプル・イズ・ベストの原点回帰には、年初にもらったオリオールズ上原からの助言があった。「自分がどういう投手か、何が一番いいボールなのか、考えるべきだ。長く一線でやるためには、練習を含めて見つめ直すべきだ」。出した結論が直球を磨くという単純作業であり、言葉をくれた球界の先輩がいつまでも続けている、ランニングを中心とした単純な下半身強化だった。

 継続は成果となり、140球を超えながら最終回に151キロを制球した。田中は「由規も気にならなかった。自分への手応えがあった」と納得したが、星野監督にはまだ足りない。「甘いね。球数が多くヒットも打たれている。もっと自分を大切にしないと。アイツなら出来るから」。求める像は高い。【宮下敬至】